NIMRA 2017年の研究会

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2017年総会

日 時:1月19日(木)19:00〜21:00
場 所:リビエール(栄)
内 容:
 2016年決算、2017年役員人事、2017年事業計画について審議し承認を得た。
 会長:鈴木 信好

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2017年2月例会

日 時:2月22日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師:近藤 知樹 氏(KONDO建築研究所 主宰、NIMRA会員)
テーマ:「建築とは、設計とは、」
内 容

 講師が所有するマンションの設計に対する考え方、事業計画などについて、サスティナブルとは「持続可能な」と訳されることが多いのですが、理論より具体的な方法について、その他、先日訪問したベルリン事情などお話し頂きました。

 昨年11月24日(木)の例会では、「建築設計に関わって---建築について、設計について」の表題で、私自身の経歴書を基に、大学時代から定年後独立の現在に至る過程で考えてきたこと、悩み、経験、影響を受けた人々について話させていただきました。
 ここ2年ほどの間に講師の依頼を何度も受けたのですが、特に皆様に話すほどの見識も持ち得ず、また特定のテーマについて持論を述べるほど深く研究したこともないので、お断りしていたのですが、逃げ切れずさて話すとなれば、テーマとしては自分が直接経験したことが、一番確かだろうと思いました。また、参加される皆様がそれぞれの経験を持ち、それぞれの悩みを克服されてきたことでしょうから、個人的な経験談も案外普遍性や共通性を持つのではないかという気持ちもありました。
 ところで前回は40年以上の出来事を1時間半くらいの時間で話したので、建築とか設計とか言いながら、ほとんど内容的な部分に触れることができなかったので、今回は再度「建築とは、設計とは」というタイトルで、具体的な事例を基に話させていただくことにしました。結果的には、今回も時間が足らなかった感じでしたが、それでも迷いながら辿ってきた建築設計の過程と、自分ながらたどり着いた建築論の一部でも話させていただいたかなというところです。
 建築も設計も大きなテーマです。なんでもそうだと思うのですが、自分が決めたテーマ(仕事といってもよい)は、たぶん一生をかけても、結果として出来ても出来なくても、どこまでも追及するべきものではないかと思います。
 また、今後他の会員の方の経歴や経験や人生観も聞きたいと思います。
(文責:TK)

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2017年3月例会

日 時:3月23日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 原 理史 氏(中部大学 中部高等学術研究所 研究員、一般社団法人環境創造研究センター 企画委員)
テーマ:「環境コミュニュケーションの実例から社会的役割を考える」
内 容

 GIS(地理情報システム)及び、ESD(持続可能な発展のための教育)に関連する環境コミュニケーションの実例から社会的役割について、お話しいただきました。

@環境コミュニケーションとは
OECDが1999年に「環境面からの持続可能性に向けた、政策立案や市民参加、事業実施を効果的に推進するためのコミュニケーションの手法あるいはメディアの活用」を提案し、環境省が2001年の環境白書において、「社会全体における環境問題に関する合意やパートナーシップを形成してゆく土台」と定義している。また環境コミュニケーションの意味としては、「自然とのつながりや環境問題に関する情報そのものだけでなく、その情報を受け取った側が環境問題解決に向けた様々な行動へとつながる要素を含んでいるもの」、つまり環境問題解決に向けた情報の社会的なやり取りである。

A地球温暖化防止の普及啓発
普及啓発の定義は、ある基本目的施策(ここでは環境配慮行動)の目標に対して協力または行動変容を求めるため、一般の人に対して広く情報を発信し、より高い認識・理解を持ってもらうように誘導するコミュニケーションである。

BESDのための環境情報の可視化
ESD(Education for Sustainable Development)とは、「持続可能な開発/発展のための教育」の英語訳で、持続可能な社会づくりのための、あらゆるレベルの教育や相互の学び合いを意味している。環境活動を可視化するためのツール(矢作川流域圏ESD伝統知プロジェクト)を作成。このプロジェクトの目標は「生物多様性」と「伝統文化」を鍵となる概念として、矢作川流域圏の流域管理にかかわる様々な地域活動を事例とし、ESDの創発に資する「考え方・方法論」について講師自ら研究し発案した。

C環境アセスメントの市民活動
環境アセスメントとは開発事業の内容を決めるにあたって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて予め事業者自らが調査、予測,評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聞き、それらをふまえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていく制度で、この制度を個人環境影響評価にも応用した。つまり、現状把握?影響の見える化?環境配慮?検証?フィードバックすることである。

事例1:小規模事業所の省エネ活動(2013年から2015年まで)
大企業及びその下請け企業は省エネ法の網がかるため、省エネ対策が行われるが、小規模事業所(店舗・事務所)では省エネ活動が全然進んでいない。そのため、春日井市内の商店街の店舗や小規模な事務所などが参加したコミュニティで、省エネ拠点(事務局)にエネルギーデータを送付、可視化を行い、事業者自らのCo2排出量を把握し、省エネ行動に結びつける。

事例2:子供の省エネ教室と家庭の省エネ活動(2015年から2016年まで)
ESD活動のコミュニティで子供の保護者に省エネ活動を依頼する。保護者の家庭で使用エネルギーを記録し、省エネ拠点(事務局)に送付、可視化を行い、環境家計簿を作成して家庭の省エネ行動に結びつける。

D環境配慮行動促進の課題
意識と行動の乖離・動機づけの重要性・動機づけ効果の分析事例・デジタルアースの活用について、図表などによりレクチャーしていただいた。

E環境文化の普及に向け
環境への関心はある程度高くなっている。背景には「心の豊かさ」を欲していることがある。

(まとめ)
様々な環境コミュニケーションが持続可能な社会構築を目標に行われている(例:普及啓発、ESD,環境アセスメント、など)。 環境コミュニケーションでは内容とともに当事者の都合を配慮した動機づけが必要。そのためには「対話(フィードバック)」と可視化(見える化)」についての工夫が必要。無用な情報が氾濫している現在、「環境」情報の流通(環境コミュニケーション)は持続可能な社会を作る上で環境文化の醸成に重要。環境文化は地球文明の構築の要素に。

(文責:TN)

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2017年4月例会

日 時:4月19日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 丸山 茂樹 氏((株)ナゴヤ・インターナショナル・サービス、NIMRA会員)
テーマ:「一億総活躍社会と外国人労働者 〜日本語学校の現場から考えること〜」
例会案内
昨年2016年末時点で在留外国人はの数は前年から約15万人増え、過去最高の238万2822人に達しました。多種多様な外国人が日本国内で様々な活動を行っているにもかかわらず、日本国内には日本人に対する日本人の為の仕組みが大半です。確かにここは日本であり名古屋ですからここに住みたければ日本語を話し日本のルールを守ってほしいし、守れなければ出て行ってほしいと言う事実は厳然として存在します。一方、既に日本国内においても日本人だけでは解決できない問題も多々出てきていますし、今後はますます増加していくものと思われます。そういった状況の中で日本人はキチンと新たに来た外国籍の人達に規則や習慣などを分かり易く説明してきたのでしょうか?
少子高齢化の中で自国民に都合の良い様な形での受け入れが世界的に糾弾され始めているのも関わらず頑なに低賃金労働者を追い求めその上部構造に乗っかって生きて行く数%の大企業の問題なども含めて日本語学校から見た「一億総活躍社会と外国人労働者」についてお話ししたいと思います。

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2017年5月例会

日 時:5月25日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 筒井 信之 氏(ATELIER基ディザイン研究所)
テーマ:「世の中の基を創る」

 NIMRA創立メンバーの一員であり、長年、シビックデザインと都市計画や地域づくりに取り組んで来られた講師から、これまでの取り組みと今後の日本社会に向けた提言などについてお話し頂きました。

1. NIMRAの創刊号

 NIMRAは1975年にスタート(42年前)、6年後の1981年(36年前)に創刊号を発刊、それが今日持参した実物です。

2. 自分史と今後のライフスタイル20年計画

 20年くらいは生きられるという前提で「セブンティーンズ日本」の実現を目指す。@タフネス ストラクチャーを核とする AMURA(山里クリエイティブ コモンズ)の各地実現 B流域社会の実例を目指す。その後、「セブンティーンズ日本」の地方分権国家を目指す。

3. 基ディザインとは − すべての事柄に言えることは基本の基となる骨格が重要である

・且つては1万ケ所ほど存在した「村」の地域単位に一万色の景観と地域興しのための原理原則を【MURAの基】とし、地形と商工業人文地理と自然地理、地域インフラと環境の現況と計画、現有人財などの把握と共有認識 (亀崎の例)

・「立方剛体骨組みシステム」をベースとした構造を【基CSR】と命名し、「里山クリエイティブコモンズ」のソーシャルビジネスとして各地での起業を誘導し、MURA全体の結び目の役を果たし、地域づくりに繋げて行く

・「この国の形」を極端な中央集権から地域主権へと変革するための州邦制度を構築する。そのために、日本の国家を自然地理的圏域で17の州に区分し「セブンティーンズ日本」と命名し、【国家の基】を築き上げていく。

4. 特許庁意匠登録 強靭体(建物の家屋の組み立て方)の基本的考え方

5. MURAの造り方、亀崎の実例

 亀崎四つの活性化策 @地形を生かす、A若者を元気に、B伝統を敬おう、C外者を入れる を基本として、国 中部地方整備局・愛知県・半田市と連携、地域内の企業・商店・アーティストとの連携「クリエイティブ コモンズ」を立ち上げる。

6. 新たな国の形(セブンティーンズ日本)

 自然地理的要素で17区分した圏域の性格は、結果として経済圏域であり、文化圏域であり、環境圏域であった。→巨大災害の防災計画を確立すべき圏域としても適切であることが判明している。

@日本国家を17色の和の色で州域を設定、異次元の個性が浮上する
A都道府県制度を廃止する
B区割りの仕方は自然地理的要素でGISの手法で区分する
C国の出先機関は州邦の州都に設置し、州議会を設ける
D原則として基礎自治体は現在のままの形態を踏襲し州の構成員とする
E州都は原則として経済都市を避けて、基礎自治体の立候補による選挙
F大都市は50万人程度の人口で地域区分し、新たな自治体とする

7. ソーシャルビッジネスの実践

@社会的課題の解決、Aビジネスとして成り立たせる事業性、B革新性

(参考) ・早稲田大学 谷本寛治教授 「ソーシャルエンタープライズ」社会的企業の台頭
・経済産業省 ソーシャルビジネス50の実例

8. 世界盆栽展を見学

 世界盆栽展を見学に埼玉新都心スーパーアリーナへ、NHKの取材で突然のインタビューを受け、朝のテレビニュースで夫婦の顔が全国に。埼玉は盆栽のメッカ、盆栽村、盆栽美術館、(急速に老けていく可能性あり)、でも皆さん元気印が多いのも事実

(感想)
 筒井信之氏のこれまでの活動は極めて多彩であり、その内容も奥が深くレベルの高いものばかりです。中でも75歳になられる現在、20年計画を持って「セブンティーンズ日本」の実現を目指す、というお話は感動的でした。1回のお話だけでは惜しいと思いますので、いつかまた続きをお願いしたいと思っております。(文責:MK)

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2017年6月例会

日 時:6月21日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 木村 有作 氏 (名古屋市教育委員会 文化財保護室 学芸員)
テーマ:「都市と遺跡 〜土地の記憶の断片(かけら)を集める〜」

例会案内

 近代以降、都市開発は「遺跡」を滅失あるいは埋没させながら進んできました。昭和25年に制定された『文化財保護法』により、「遺跡」は時に応じて埋蔵文化財と名を変えながら、史跡として保護を受けたり、あるいは発掘調査を行うことで記録保存というかたちで、その存在を示したりしています。 こうした埋蔵文化財は、地形と密接な関係を持ち、都市開発の中で断片(かけら)となりながらも、土地の記憶を蘇らせるかけがえのない情報を、都市に暮らす私たちにもたらしてくれるのです。

 近年、埋蔵文化財を含む文化財の保存と活用が、私たちの生活の一部でも大きな役割を占めるようになってきました。従来、都市発展の障害として邪魔者あつかいもされてきた遺跡(埋蔵文化財)は、将来のまちづくりの要素のひとつとして生かしていくことが望ましいのではないでしょうか。

 さらに、こうした「土地の記憶」は、その土地の歴史への新しい知見をもたらし、かつ地域のもつ本質やパワーを見直す機会も与えてくれるはずです。ある考古学者(故人)は、「考古学は地域に勇気を与える」という言葉を残しました。本来の姿が見えにくくなった都市部においても、この言葉は生きていると考えます。

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2017年7月例会

日 時:7月20日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 団野 誠 氏 (中日新聞社、NIMRA会員)
テーマ:「久屋大通公園を語ろう」

内容

 久屋大通公園は、米軍による爆撃で焼け野原になった名古屋の都心に戦後、一気に誕生した。戦災復興のひとつだった。幅百メートル、長さ1.7キロの巨大な緑地であり、道路であり、防災インフラである。 しかし公園としてはその魅力を十分に引き出せておらず、管理する名古屋市もいま、都市公園法改正にあわせてPFI導入など活用策を打ち出そうとしている。

 例会の前半は話題提供を兼ねて、久屋大通公園のこれ迄とこれからの展望について、講師の持論をお話し頂き、後半は、出席者の皆さんと論議を行いました。(文責:MD)

資料

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2017年緑蔭講座

開催日: 9月23日(土) 24日(日)
行き先: 聴竹居(京都府大山崎町)、京都市内
講 師: 田邊 均 氏 (一般社団法人聴竹居倶楽部 事務局長)
テーマ:「住宅建築の集大成 聴竹居を見学する」

案 内:
 京都で鉄道博物館を見学の後、山崎で聴竹居を見学します。聴竹居は、 昭和 3年、藤井厚二 、藤井厚二 、藤井厚二 が住宅の理想形を追い求めて作った、建築集大成です。 が住宅の理想形を追い求めて作った、建築集大成です。宿泊は、外国人観光客に人気の京町屋を1棟借りします。

日 程:
 9月 23日(土)
   午前  京都鉄道博物館 見学
   午後  聴竹居 見学
   夕食  京ごちそう いしまる
   宿泊  京町家のやど 別邸 佛具屋町
 9月24日(日)
   自由行動

内 容
 今年の緑蔭講座は、2つの目的があった。1つは、竹中工務店に在籍していた建築家の藤井厚二が住宅の理想形を追い求めて作った住宅建築の集大成、聴竹居の見学である。もう1つは、町家を使った貸切宿に宿泊し会員間の親睦を図ることである。

 初日、京都駅に着いた我々は、最初に宿運営会社が京都駅前に開設する事務所で、チェックインの手続きをとり、荷物預かりを依頼した。鍵はなく、現地でタッチパネルに暗唱番号を入力するシステムであった。最近、外国人観光客に人気のあるこの種の宿泊施設が、このようなシステムで運営されていることを身を以て体験した。

 京都鉄道博物館では、約1時間半過ごした。昨年4月に開館した日本最大の展示面積を持つ当館は、多くの家族連れで賑わっていた。もとより全ての展示物を見て回る時間はなかったが、鉄道車両や施設などを通して当時の社会生活や事業活動の様子を思い起こすことができた。

 メインイベントである聴竹居見学は、竹中工務店のOさんのご尽力で実現した。その建物は、JR京都線 山崎駅から線路沿いに歩き、天王山の緩やかな上り坂を少し登った林間にあった。到着後、早速、地元住民の方々がメンバーである一般社団法人聴竹居倶楽部の田邊事務局に案内していただき隅々まで見学した。

 藤井氏が5回目の自邸として建てたこの木造住宅は、本年7月31日に重要文化財に指定されたばかりである。実物を見ながら建築計画、デザイン面の考え方、居間中心のプランニング等について詳細な説明を受けた。また、空調設備がないのに快適な室温と湿度を保っていることを実感した。これにより、聴竹居が和洋の生活様式の統合と日本の気候風土との調和を目指した住宅であり、環境共生住宅の原点と言われる所以が理解できた。今から90年前にこのような発想を持ち実践したことに驚くばかりである。退室時に購入した解説書には四季折々の佇まいを見せる聴竹居のカラー写真が載っていた。

 夜の食事は、宿から徒歩10分の京料理の店でコース料理とアルコールを堪能した。記録に残せないような話題ばかりであった。

 宿は、思った以上に清潔であり、海外からの観光客には、普通のホテルや旅館では味わえない日本情緒を感じさせるものと思った。日本人の我々には、その点での感動を呼ぶものではなかったが、1日1組限定貸切りの気楽さで宿での飲み会も談論風発となった。

 翌日は、自由行動であり、直ちに帰名、京都を散策、京都で仕事、東映太秦映画村見学組と別れた。天候にも恵まれ秋の京都をNIMRA流に楽しんだ緑陰講座となった。事前準備していただいた担当幹事の森田さんに感謝したい。

(文責:NS)

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2017年10月例会

日 時:10月18日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: デン 真 氏(祭(まつり)写真家)
テーマ:「愛知の祭」

例会案内

 デン氏は、愛知県出身のプロ写真家です。(有)エヌケーケー 代表取締役として商業分野の写真撮影や企業広告物の製作などを行なっています。しかし、氏にはもうひとつの顔があります。それは祭写真家としての顔です。氏は愛知県でも特に山車祭が盛んな知多半島の常滑市で生まれ育ちました。これが原体験となったそうです。

 実は、愛知県は祭りの宝庫です。例えば、からくり人形を載せた山車では、全国の50%以上を愛知県は有しています。また、愛知県、そして中部地方では、 火の祭、海の祭、川の祭等々、実に多くの祭が今も盛んに行なわれています。こうした祭文化の蓄積が、昨年の「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産への登録の根底となったように思います。

 10月例会では、デン氏が撮影された臨場感あふれる祭の写真を時間の許す限り拝見し、私たちの知らない地元愛知の祭文化に触れてみたいと思います。

例会当日の内容

 愛知の祭は、多様性では日本一である。何故その多様性が生まれたか。起源は縄文、弥生時代に遡る。弥生文化が西から尾張に到達した後、名古屋東部の丘陵を境として、東側に縄文文化、西側に弥生文化が定着した。これが2つの分化の接点となり、その後の文化に多様性をもたらした。講演では、この話を起点として、祭が時代・習俗の変遷とともにいかに推移してきたかをプロ写真家ならではの写真を用いて説明していただいた。以下にその概要を記す。

 奈良・平安時代以前の日本では信仰の対象は、二見浦の夫婦岩のような大きな岩や山であった。これが神の宿る場所であり神社の原始的形態であった。このような時代の祭は、踊りと密接不可分であった。これは今でも、五穀豊穣を祈って行なわれる熱田神宮の「御田植祭」での早乙女の女性踊り等に見ることができる。

 奈良時代に入ると神仏習合の時代が長く続いた。この時期、祭は天変地異や疫病流行を背景とした怨霊信仰やお払いのための祭礼文化として発展した。こうした除厄や招福の祭として、熱田神宮の「踏歌神事」「舞楽神事」「南新宮祭」、国府宮の「はだか祭」、中村区の「きねこさ祭」、西尾市の「鳥羽の火祭り」と「てんてこ祭」、岡崎市の「滝山寺鬼まつり」、その他多くの祭について説明があった。

 次の戦国時代には、織田・徳川・今川・武田による覇権争いを背景とした戦勝祝い、戦没者供養のための新しい祭が現れた。蟹江町の「須成祭」、西尾市一色の「大提灯」、東浦町と高浜市の「おまんと祭り」、新城市信玄塚の「火おんどり」と「 乗本万灯」、豊川市の「豊川手筒まつり」などである。

 江戸時代に入ると尾張と知多が江戸と上方の物流中継地として発展したことにより「山車(だし)祭」が隆盛となった。また、徳川宗春がからくり人形師の玉屋庄兵衛を京都から呼び寄せたことにより「からくり人形」が発展した。名古屋市中区の「東照宮祭り」、中村区の「花車神明社祭」、東区の「徳川園山車揃え」と「出来町天王祭」ならびに「筒井町天王祭」、緑区の「有松絞りまつり」と「鳴海表方祭」、清須市の「西枇杷島祭」、犬山市の「犬山祭」などである。

 知多半島には、100台を超える山車と50を超える山車祭があるが、代表的な祭について解説があった。その一部の祭名と特色を挙げる。半田市「亀崎 潮干祭」(海浜曳き下ろし、三番叟人形)と 「山車祭り」(曳き揃え、からくり人形)。常滑市「大谷祭」(三番叟人形)。美浜町 「上野間祭礼(からくり人形浄瑠璃)。常滑市 「矢田八幡社の虫送り」(大型松明での害虫退治)。東海市 「大田まつり」(どんでん、からくり)。東浦町「藤江神社のだんつく獅子舞」(一人立ち獅子舞)。知多市 「牟山神社」(梯子獅子)。南知多町内海 「神楽船祭り。日間賀島祇園祭(船型山車)ほか。

 一方、この時期に三河の山車祭は独自の発展を遂げている。知立市 「知立祭」(山車文楽)。刈谷市 「万燈祭」(高さ5mの万燈)。豊川市 「若葉祭」(殿様からの馳走への感謝を表現する路上での寝転がり)と 「菟足神社(うたりじんじゃ)風まつり(手筒花火)。田原市 「田原祭」(からくり人形、神輿、手筒花火ほか)。豊田市 「足助祭(山車上での踊り、火縄銃演武)と「挙母祭(紙吹雪)。蒲郡市「 三谷祭(山車の海中渡御)など。

 続いて、時代が明治となり政府が「神仏分離」を進めたことにより変化を余儀なくされた祭もある。例えば、北設楽郡東栄町の「花祭り」は、内容を神話に基づく「大蛇退治」として神道化することで存続を図っている。南知多町の「豊浜鯛まつり」は、明治18年に始まった。当初の張りぼては「はつかねずみ」であったが、大正初期に現在の「鯛」となった。

 第二次世界大戦終結後は、新しい形態の祭、女性参加の祭が始められた。昭和53年に始まった「大須大道町人祭」は、官製の「名古屋まつり」に対抗したものだが今年で40回目を迎えた。「にっぽんど真ん中祭り」は、平成11年に誕生し、現在では観客動員数で国内BEST5に入るまでになった。当地区は昔からモノ作りが盛んであり産業の集積地であった。これによる経済的な豊かさと働く人々の存在が愛知の祭を脈々と育ててきた。

 以上、講演内容を記したが、拙文では十分に理解していただけないと思う。デン氏の写真は、愛知県の広報誌などに多数採用されている。是非、Webや刊行物でご覧いただきたい。

(文責:NS)

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2017年11月例会

日 時:11月22日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
講 師: 冨岡 万輝 氏(潟Jラフルコンテナ代表取締役 NIMRA会友)
テーマ:「耐震シェルター まもルームの開発について」

例会案内

 冨岡氏は若くして中古コンテナの流通ビジネスのベンチャーを起こされたお馴染みの元会員であるが、悩みは優秀なコンテナ鋼材がJISの規格認証がないためそのままでは建築利用ができないことであった。なんとか建築物に該当しない形で合法的に建物の補強ができる耐震シェルターの開発が出来ないものかと相談を受け、ちょうど阿竹が考案中の回転対称型構造ジョイントの考え方を生かして高強度で簡単に組み立てられる「まもルーム」の開発に乗り出すことになった。特許出願済み。

 これは部屋の中にすっぽり入る構造体を組み立てて設置するもので、従来品も存在す るが多くは木質系で強度のわりに高価格であった。二年の開発期間をかけてようやく四畳半バージョンの試作が完成。今年の八月に名城大学武藤研究室の協力を得て、公開実証実験を行い、マスコミ各社に報道された。 (東海テレビ、中京テレビ、テレビ愛知、共同通信、日本経済新聞、中部経済新聞日刊工業新聞、毎日新聞、後に中日新聞) 10月にはオアシス21でも展示、おかげで現在問い合わせが相次いでおり、来春の発売を目指して製品のブラッシュアップを行っている状況である。

 例会当日は、冨岡氏による開発の経緯や製品の紹介、また特許の紹介や開発を通じて感じたことなどを申し述べたい。会員各位の活発なご意見や叱咤激励をいただければ考えている。

例会内容

 耐震シェルター「まもルーム」は、講師の冨岡氏が企画、(株)阿竹研究所の阿竹氏(一級建築士、NIMA会員)が設計と特許出願、名城大学の武藤研究室で構造解析と実験を行ったものである。8月に行われた公開実験はテレビ局3社新聞5社に報道された。

 住宅そのものに耐震補強を加えることは法的制約も多くコストもかかるため、建築物ではなく一部の部屋の中に設置することでその内部空間だけを守る耐震シェルターが考えられた。木造を中心にすでにいろいろなものが発表されているが、今回開発されたものは海上コンテナの壁用鋼材を使うことでこれまでにない構造強度を手軽に実現できるように考えられている。計算では150tonの鉛直荷重に耐え、実験ではピアノが二階から自由落下する衝撃にも耐えられることが確認された。

 2mm厚の鋼板で出来ているが、全体は200kgとアップライトピアノ一台分程度の重さであり、四本の足にかかるそれぞれの荷重は大人一人の体重程度に抑えられている。また一つの部品は20kg程度で、ボルト接合で30分程度で組み立てられる。

 10月18日にオアシス21で展示され、そのマスコミ報道以来、いくつもの問い合わせが寄せられている。来春発売を目標に開発が進められているが、住宅全体が倒壊した際の水平力をどう考えるか、また基礎の補強や固定の仕方などの課題も多く、現在改良が進められている。このシェルターに使われた接合部の特許について、阿竹氏から解説があった。

 今回例会への出席者は少なかったが忌憚のない有意義な意見が多く寄せられ、そのあとの懇親会も全員参加で盛り上がった。

(文責:KA)

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2017年12月例会

日 時:12月20日(水)19:30〜21:00
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル7階)
内 容:情報交換市
 会員が最近の話題を持ち寄り、忘年会を兼ねて談義しました。

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