NIMRA 2015年の研究会

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2015年総会

日 時:1月29日(木)19:00〜21:00
場 所:リビエール(栄)
内 容:
 2014年決算、2015年役員人事、2015年事業計画について審議し承認を得た。
 会長:鈴木 信好

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2015年2月例会

日 時:2月25日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
発題者:丸山 茂樹 氏 (日本語学校I.C.NAGOYA校長、NIMRA会員)
テーマ:「大ナゴヤ圏と外国人労働者」
内 容

長年、2月例会は国内の外国人問題を話題として提供して参りましたが、日本における外国人労働者問題も最終局面を迎えようとしていますので、「大ナゴヤ圏と外国人労働者」と言う切り口で話を進めて参りたいと思います。

日本政府は小出しにして来ていた外国人労働者の導入に対して、昨年秋には、5,000人の建設労働者、そして低賃金労働者ではないかと海外からも指摘を受けている外国人研修生の研修期間を3年から5年に延長する事を決めた。介護労働者についても来年度から1,000人弱の研修生を受け入れて、海外の介護現場へ帰国後に役立てると言う名目で導入を決定した。こうした流れの中で、今後、大ナゴヤ圏がどの様に変わって行くのかを参加者の皆様と共に考えたいと思います。

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2015年3月例会

日 時:3月26日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師:松林 正之 氏 (一般社団法人中川運河キャナルアート 理事長、一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 主席研究員)
テーマ:「水辺空間から見る名古屋の将来 〜中川運河の多面的価値の向上〜」
内 容

 今回は一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の主席研究員としての活動から派生した中川運河キャナルアートについて詳細な説明を受けた。

 中川運河は歴史的に古く、名古屋中心部への水上輸送を担ってきた大動脈であるが、現在はトラックによる陸上輸送が主流になり、中川運河はその役を終えかのようにひっそりと佇んでいる。その産業遺産としての倉庫に新しい価値を吹き込み、「ものづくりから「まちづくり」への転換をアートの力で行おうという取り組みが、この中川運河キャナルアートである。

 中川運河の沿岸は名港管理組合が管理する土地であるため、そもそもの物流目的とは異なるアートイベントの立ちあげは当初困難を極めた。しかし、氏らの熱心な活動により行政も重い腰をあげ、プロジェクト開始わずか5年で平成26年度の「手作り郷土賞」(国土交通大臣表彰)を受賞するまでに成長したのである。

 現在は年に1度のアートイベントであるが、氏が目標とするのは多くのアーチストを惹きつけるこの中川運河の魅力を、もっと多くの人に知ってもらい様々な人々の交流からアートのインキュベーターにしたいと思っている。そしてその可能性は、ここ中川・中村・西区などのものづくりとアートが融合する“メイニシ”にはあると考えているのである。

 これらの説明の最後に、名古屋駅の開発に伴い中川運河周辺では様々なプロジェクトが計画されているので、中川運河の多面的価値の向上を国土強靭化計画に基づく防災のスキームなども活用して、地域の活性化を図るべきとの提案を頂いた。その後の質疑応答では、民間の取り組みに対し、なかなか行政が対応してくれない問題点が指摘され、その実現性などが議論された。

 NIMRAの例会では、まちづくりの議論には必ず民間と行政とのコンフリクトが話題となる。その中で単なる構想でなく、行政との信頼関係を築くことで具体的な活動を実現させてきた氏の講演は興味深いものであった。筆者は近年のものづくりにはデザインが欠かせないことは明白な事実であると考えている。デザインはビジネスの中で使われることでユーザーに分かりやすく、客観性を持つものでなければならない。その一方、アートは自分の感性を表現し、その意味を受け取る個人個人がそれぞれ感じとればよい主観的なものと考えることができる。このような違いはあるが、アートにふれて磨き上げられた感性がデザインに反映され、美しいものづくりや街づくりに寄与する様子を応援していきたいと思った。
(文責:YT)

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2015年4月例会

日 時:4月22日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 林 清隆 氏 ((株)国際都市政策研究所 所長、NIMRA会員)
テーマ:「名古屋大都市圏の将来構想」
内 容:

 大阪で話題になっている大都市の二重行政の解消を問う住民投票が5月17日に迫っている。当初は府市一元化の住民反応は拮抗していたが、最近の世論調査では、大阪市廃止による方策は住民の反発が強く、橋本市長提案の原案は否定されそうな状況となっている。大都市行政の100年戦争といわれてきた二重行政解消は多難である。

 名古屋においても同じような状況で、この二重行政の実態を明治以降の行政制度、ことに指定都市制度という不可解の制度による歪みと対立について各種の事例を紹介した。愛知県との一体化を図る中京都構想が提言されているが、言葉だけでその実態が全く見えてこない。大阪のように名古屋市を廃止し、愛知県を中京都に名称変更するだけでは、大阪以上に名古屋市民の大反発を食らうであろう。やはり、現在の府県制は道州制が導入されるなら消えていくものであるため、大都市が中核となった都市圏形成が順当といえる。府県制は、民間業務でいえば、卸会社みたいなもので、零細、中小企業には、それなりの存在価値はあるが、小売業といえども大手百貨店、スーパー、量販店にとっては特に必要な存在でもなくなっている。大手小売業者は流通産業の川上まで支配力を延ばし、さらにメーカーまで影響力を及ぼしている。そういう意味で、行政も民間の業務活動に脈絡するものがある。

 一朝一夕には達成できないが、堅実な方法としては、昭和31年まで地方自治法に規定があった「特別市」制度を復活し、名古屋市を県より独立した特別市として、順次、周辺自治体を合併していく事であろう。

1.日本における大都市行政
- 廃藩置県(1871)と市町村制導入(1869)における大都市行政の欠落
- 東京都制の設立(1943年)(東京府と東京市の併合)
- 特別都市制度の廃止と指定都市制度の導入(1956)

2.大都市と府県との二重行政と対立
- 大都市への合併拡大への府県の反対
- 住民サービスの競合と意思決定の分断
- 二重行政による住民負担の増加
- 広域行政の欠陥(例、交通、水道、文化・集会施設など)

3.道州制の動き
- 現代版:廃県置州・・・中部州の圏域と役割は?

4.名古屋大都市圏における都市圏の定義と名称
- 三大都市圏の場合の名古屋圏域は、名古屋周辺と三重県北部(岐阜県は含まない、中部圏計画の都市整備区域のみ)
- 一般的な名古屋大都市圏:名古屋からの50km圏で豊橋と津地域を入れるが、滋賀県は入れない。
- その他の名称:グレーター名古屋、メトロ名古屋、中京都構想、etc.

5. 名古屋大都市圏の将来構想
第一段階:名古屋市を特別市にし、周辺市町との積極的合併を進める。
第二段階:愛知県を東西に2分割する。名古屋都(人口500万人)は尾張部と豊田を含む西三河。
第三段階:道州制の導入による名古屋都を位置づける。都の下に住民サービス主体の10ほどの区庁を作る。
第四段階:道州制の基に名古屋を中心とする50-80kmの圏域(人口約1,000万人)に大名古屋都市圏開発庁をつくり、地域開発の計画調整と基幹事業を担当する。

(文責:KH)

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2015年5月例会

日 時:5月21日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 脇坂 博明 氏 ((株)脇坂公開企画 代表取締役、NIMRA会員)
テーマ:「米国FRBの金利の引き上げによる世界情勢の変動」
内 容:

 米国連邦準備制度理事会(FRB)が、連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的金融緩和に伴う証券の購入を昨年10月末で終了することを決めてから、米国の景気回復は底堅く推移し、雇用情勢も改善して失業率は低水準となった。 今後の焦点は、FRBがいつ政策金利の引き上げに踏み切るかである。政策金利を事実上ゼロにする「ゼロ金利政策」について、FRBは量的緩和の終了後も「相当な期間、ゼロ金利政策を維持する」としているが、市場関係者の間では今年中の利上げを予想する声が多い。

 利上げが遅すぎると、物価の安定に影響を与えるとともに、リーマン危機のきっかけとなった米国の住宅バブルの崩壊は金融緩和の長期化が一因だったが、一方で早すぎる利上げは雇用の回復にマイナス要因となる。 国際的に見ても、欧州中央銀行(ECB)理事会は、本年1月22日に量的金融緩和に踏み切り、中国も4月19日に国内景気を下支えするため、量的金融緩和を行ったところである。 FRBが「ゼロ金利政策」の対応を誤ると、通貨や株式等の国際金融市場が動揺することが予想されることから、FRBは雇用情勢や物価状態を検討し、利上げの時期を慎重に見極める必要があるため、当初予定していた6月17日から、9月17日または10月28日へと遅らせるだろうし、雇用情勢の推移如何では年内の利上げはなく、来年の利上げになる見通しもある。

 日本経済も決して無関係ではなく、FRBが利上げを始めれば、日米の金利差が拡大することで、マーケットでは円売り・ドル買いが進みやすくなり、急激な円安は原材料やエネルギー価格の上昇を通じ、景気を下押しする恐れがある。 新興国においても、米国の利上げの影響は大きく、新興国に積極投資している米ドルとともに、巨額の経常赤字や財政赤字を抱えている新興国から資金が米国に流出すれば、当該新興国で通貨安とインフレに拍車がかかり、インフレを防ぐための当該新興国の利上げがさらに景気を減速させる悪循環に陥る可能性は十分ある。 新興国からの資金流出は、日米を含む先進国の経済にも少なからず打撃を与えかねないだろう。

(1)多くの企業は、銀行から資金を借りて事業を行うが、金利が上がると返済額が増えるので利上げは業績悪化につながると考えられ、米国企業の業績悪化は取引のある世界の企業に影響するため、米国の株安は世界の株安に連鎖すると考えられる。

(2)米国の金利が上がると米ドルが買われるので、円安米ドル高になる。円安は日本の輸出企業には追い風だが、海外旅行には行きにくくなるほか、原発の稼動停止により化石燃料の輸入が増えているが、円安は輸入価格を上昇させるため電気料金の値上げ、ガソリンその他の輸入品も価格上昇するだろう。

(3)米国から溢れた資金は新興国に流れ込み、新興国の株式や債券は買われて米国だけでなく新興国の景気も支えてきたが、利上げはこの流れに逆行することになり、FRBが一番恐れているのは物価の急上昇、つまり想定外のインフレの常態化である。

(文責:HW)

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2015年6月例会

日 時:6月24日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 山田尚武 氏 (弁護士法人しょうぶ法律事務所 代表、弁護士)
テーマ:「2027年リニア開通を目指して,実現しよう黄金の天守閣」
内 容:

 戦災で焼失する前の名古屋城天守閣は1612年に建てられた。1930年に城郭として初めて国宝に指定された天下の名城であった。現在の天守閣は1959年に鉄骨鉄筋コンクリート造で復元された。築50年以上が経ち老朽化が進んでいるため何らかの手立てを講じなければならない。名古屋市がまとめた調査結果によれば2つの方法がある。@早期に木造復元する。総工費は270億円から400億円と試算。A耐震改修で維持した後、約40年後に木造復元する。同29億円。名古屋市は木造復元したい意向である。

 このような総括的な解説の後、講師より「単に木造復元するだけでは意味がない。天守閣全体に金を貼り黄金の天守閣とするべきである。こうすることで初めて外国人観光客にもインパクトを与えることができ経済の活性化にもつながる。」との提言があった。これを受け参加者より活発な意見が出された。事前にメールで寄せられた意見も引き合いに出され議論は大いに盛り上がった。ここにその一部を紹介する。

この他、各自の金に対する認識や元素記号表の話題など幅広い討議が続いた。

 後日、6月30日中日新聞朝刊1面に「名城復元 まず市の判断 文化庁 木造以外も排除せず」との記事が掲載された。改めて旬なテーマと認識した。
(文責:NS)

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2015年7月例会

日 時:7月24日(金)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 長坂 英生 氏 (名古屋タイムズ・アーカイブス委員会、元名古屋タイムズ記者)
テーマ:「戦後70年 写真でたどる名古屋の変貌」

案内文:
 つい先日発売になった写真集「昭和の名古屋 昭和20〜40年代」 (光村推古書院)は、名古屋タイムズが撮影した写真をもとに編集されました。戦後の名古屋の中心部の復興と変貌、当時の街の息遣いがびっしりと詰まっています。 また、長坂氏は、近く発売される予定の大型写真集「写真アルバム 名古屋の昭和」(樹林社)にも携わっていらっしゃいます。戦後70年の節目に、ふたつの写真集を題材にして、名古屋の街の戦後を振り返り、「リニア後のナゴヤ」を展望する例会になればと思います。

内 容:
 名古屋タイムズは昭和21年に創刊された。このたび京都の出版社から出た写真集「昭和の名古屋」は、名タイのカメラマンが撮影した写真のうち、終戦後から昭和40年代までの約200枚を収録している。今夜は、広小路通りにそった写真を中心に50数枚、選んできた。スライドで順に写しながら、街や広小路通りの変化をたどってみたい。写真集に含まれていない写真もある。

 1枚目は、昭和30年の名古屋駅前。北側から南を撮影している。東洋一のステーション(旧名古屋駅)が写真の右側にドーンとあり、まだ低層の名鉄名古屋駅と百貨店、建設中の毎日ビルや豊田ビルも映っている。中央の囲いは、地下鉄工事だろうか。

 (注=こんな感じで、スライドショーは、笹島交差点から柳橋、納屋橋、伏見、栄町交差点へと広小路通りにそって東へと進んだ。当時の建物の外観だけではなく、行き交う電車や馬車、輪タクも出てくる。劇場内ではロカビリーショー、百貨店の屋上では様々なアトラクション。ビヤガーデンや居酒屋はサラリーマンでにぎわい、おみくじやタコ焼きの人気露店には人々が群がっている。広ブラの歩道ではサンドイッチマンが行き交い、老若男女が笑顔でそぞろ歩きを楽しんでいる。映画「三丁目の夕日」の名古屋版のようだ。参加者はそれぞれの思い出と重ね合わせているのか、講演中は質問はほとんどなかった。後半の質疑では以下のようなやりとりがあった)

―この写真は名古屋の遺産だと思う。アーカイブスの総点数や保存は? 「名タイ掲載分だけで30万枚はあろうが、劣化もあり、使えるのは10万枚ぐらい。我々だけでなく名古屋市の都市センターや博物館の援助、協力も得ながらデジタル化を進めている」

―写真集に掲載する写真はどのようにして選んだのですか? 「この出版社からはシリーズとして先に神戸、大阪、京都、大和路編が出ていて、章立ても決まっていたので、かなりの部分の選択はおまかせした。意外だったのは、ビル屋上から俯瞰した構図や、建物や乗り物そのものを多く選んだことだった。こちらから追加提案したのは、名古屋駅ホームのきしめん屋さんとか、円頓寺の映画館など10枚くらいだった

―本屋さんでも人気だと聞いています。 「出版社から評判いいと聞いている。戦後70年の6月に発売したので本屋さんも平積みしやすかった。4月に移転開店した丸善さんも大展開してくれた。とはいっても写真集というのは、もともとそれほど売れるものでない。ランキングでAKB48水着写真集とかに紛れ込んでるくらい(笑)

― 名古屋の街は当時と比べてよくなっているのでしょうか? 「名駅は当時からビルが建ち始めていたし、巨大化は仕方ない。広小路や栄は地盤沈下がいわれ大和生命ビルも明治屋もなくなった。もとの表情や個性がなくなっていくのは残念。働いている人には関係ないかもしれないが、個人的には、市電やレトロなビルはやはりよかったなあ、風情は残してほしいなあ、とは思っています。

(文責:MD)

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2015年 緑蔭講座

日 時: 9月12日(土) 13:00〜17:00
場 所: ECO35 エコサンゴ (名古屋市熱田区六野1-3-1)
講 師: 香坂 玲 氏 (金沢大学 人間社会環境研究科 地域創造学 准教授 )
テーマ:「生物多様性の面からナゴヤの今後を考える」

案内文

 今回の緑蔭講座は、自動車部品メーカーである三五コ−ポレ−ション蒲lの研究広報拠点であり、森や田や畑からからなるビオトープや本業の技術を展示する「マフラーミュージアム」などからなる施設「ECO35」を会場として、金沢大学 人間社会環境研究科 准教授 香坂先生からの講演、「ECO35」の見学、三五コーポレーション鰍フ後藤幸雄様からの解説を頂き、生物多様性の面からナゴヤの今後を考えたいと思います。

 会場の「ECO35」は、自動車部品メーカーである三五コ−ポレ−ション蒲lの旧本社工場跡地にある施設です。森や田や畑からからなるビオトープや本業の技術を展示する「マフラーミュージアム」などからなる研究・広報拠点です。香坂先生のご紹介により全面的にご協力いただけることになりました。

 ここの敷地は土壌汚染対策法(2003年施行)に対処するため汚染処理作業が施されました。同社はこれを地域との連携や地域への貢献を具現化する好機と捉え、2006年に同社社員と近隣小学校の児童、教職員、近隣住民との共同作業で植樹を行いました。指導には横浜国立大学の宮脇昭先生があたられました。この森には熱田神宮の植生状況の調査に基づき53種類、18000本の苗木が植樹され、およそ10年という短期間で自然が見事に回復しています。「ECO35」の取組みは、企業のみどりの保全・創出に関する優良な取組み事例として国交省より表彰されています。

当日の内容

 香坂先生の講演は2時間に及んだ。その一部を紹介する。まず「生物多様性」についての基本的な解説があった。「生物多様性」は包含する事項が自然保護から遺伝資源・経済問題まで極めて多岐に亘る。このため分かりづらく「CO2」のような主流の言葉にはなっていないとの説明もあった。

 次に、COP10で採択された「愛知目標」と「名古屋議定書」についての解説があった。「愛知目標」は、生物多様性の損失を食い止めるための緊急行動として20ポイントについて指標を定めている。例えば、目標1は認識・普及啓発に関する事項である。展開事例として高山市での小学生に対する生物多様性読本の発行、八事の幼稚園での「環境マップつくり」、動物との触れあい活動による不登校への対応などが紹介された。

 「名古屋議定書」は、遺伝資源(医薬品や食品の開発に利用される微生物や動植物などが持つ遺伝子)の利用により生じた利益の配分ルールについて定めている。昨年50ヶ国以上が批准したため発効した。日本は経産省と環境省が協議中でありまだ批准していない。慎重姿勢をとる製薬会社の動きについても説明があった。

 人の生活と生物多様性保存を両立させる取り組みとして日本が推進する「SATOYAMAイニシアチブ」の紹介があった。これは古くから受け継がれてきた里山という生産システムに着目した方法であり従来主流であった国立公園等の方式とは発想が異なる。

 現在、微生物ハンターによる微生物獲得競争が世界中で起こっている。白蟻の巣にもアプローチしている。未知の微生物により新しい医薬品が開発されたならば莫大な利益につながる。名古屋がCOP10を誘致できたのは環境保護に対する活動実績とホテルなどのキャパシティが整っていたからである。日本そして当地区が国際的なルール作りでも実績を残したことは大きな意義がある。

 講演後の質疑応答では、「東山の森のレクリエーション便益評価」の意味や「名古屋議定書批准」に関する最新動向、あるいは「環境ホルモン」問題の最近の動向などについて質問が出された。

 ECO35の見学は、紹介映像の視聴後、三五コーポレーション蒲lのご案内で森・ビオトープ・マフラーミュージアムの順に見学した。 熱田神宮の植生と同じ53種類、18000本の苗木が植樹された森では10年という短期間で見事に回復した緑に一同驚いた様子であった。またマフラーミュージアムも普段見えない部分であったためか大変好評であった。

 最後は金山の店に場所を移し香坂先生、三五の後藤様とともに楽しく懇親会を行った。

<講師略歴> 香坂 玲。静岡県出身。東京大学農学部卒業。ハンガリーの中東欧地域環境センター勤務後、英国で修士、ドイツ・フライブルク大学の環境森林学部で博士号取得。2006年からカナダ・モントリオールの国連環境計画生物多様性条約事務局に勤務。COP10支援実行委員会アドバイザー(H20-22)。当地区でも次の通り幅広く活動。南山大学 社会倫理研究所非常勤研究員、名古屋市環境審議会委員、名市大大学院 経済学研究科 准教授(環境経済、環境マネジメント担当)(H20-24)、愛知県知財プラン策定委員会(H22)、名古屋都市センター特別研究員(H21-22)。金沢大学 人間社会環境研究科 地域創造学 准教授 著書「いのちのつながり − よくわかる生物多様性」「生物多様性と私たち − COP10から未来へ」「地域のレジリアンス」「地域再生」

(文責:NS)

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2015年10月例会

日 時:10月21日(水)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 川合 勝義 氏 ((一社)中部航空宇宙産業技術センター コーディネーター)
テーマ:「中部圏の航空宇宙産業の現状と未来-MRJ初飛行にちなんで」

案内文

 三菱航空機では、YS11以来となる国産ジェット旅客機MRJの初飛行を10月末に予定している。4度の延期を経て待ったなしになっているだけに、失敗は許されず、日本の産業界の期待を一身に集めているといっても過言ではない。
 講師は、川崎重工の生産技術部でBK117、ボーイング777などの生産組み立て計画に携わり、ボーイング777ではシアトルで一年間DBTマネージャーとして活躍、1999年からはブラジルで今回のMRJのライバルとみなされるエンブラエルの機体プログラムマネージャーとして活躍された。2008年から2014年までブイ・アール・テクノセンターにて航空宇宙産業の人材育成や新規参入を支援。現在は、(一社)中部航空宇宙産業技術センター(C-ASTEC)のコーディネーター。1万人を超える読者に週刊メールマガジン「航空業界News」を配信中である。
 中部地区、大名古屋圏は、ゼロ戦以来の日本の航空産業の中心であり、宇宙でもJAXAのH2ロケットなどの生産拠点となっている。やはり中部地区に集積する自動車産業との連携も大きく、今回のMRJでは早くも初飛行後の増産体制に備えて、人材獲得競争にも拍車がかかっている。
 日本の航空宇宙産業はまだまだ産業全体から見た比重が小さく、それだけに大きな伸びしろを秘めているといえる。中部と日本の航空機産業および航空機技術の現状と動向。その未来像とそこに至るまでの問題点などを伺ってみたい。

講演内容

 講師は、川崎重工時代にボーイングやエンブラエルの生産のため、マネージャーとしてシアトルやブラジルに長期滞在された経歴をお持ちで、退職後ははその経験をもとに中部を拠点として企業の航空産業への新規参入を薦める仕事をしておられる。今回の例会は、注目を集める国産初のジェット旅客機MRJが初飛行の五度目の延期をする中で行われ、多数の一般参加があり、盛会であった。講演は、スライド31枚で行われた。

 近年、航空機に要求される性能は、安全性はもちろんのこと、燃費、快適性、耐久性など多岐にわたってますます高度化している。需要もどんどん拡大しており、現在世界で14,456機もの受注残がある。それに応える為、ボーイング737などは月産47機の生産枠を設けて対応している。

 高度化を支える新技術の一番は、高圧水切断などの加工技術に支えられた複合素材の大規模な利用であり、増産と人件費削減のため組み立てなどの自動化も進行している。これらの新技術はいずれ自動車など他の産業分野にも広がることが予想される。

 期待を集めつつも度重なる開発の遅延が続いたMRJだが、その原因は、胴体サイズや主翼の構造の見込み違いがあった。ギヤードターボファンエンジンの採用で静粛性や低燃費が売りだったのが、遅延の間にライバルのエンブラエルも同じエンジンを使い、三菱が見送った主翼のCFRP化まで決定しており、三菱はこれ以上納期の遅れを招くとビジネスとして命取りになりかねないところに追い詰められている。現在確定受注は223機だが、それをこなしたあと追加受注がないと第二のYS11に成りかねない。

 折しも、マンションの杭データ改竄やフォルクスワーゲンのデータ偽装が大きく報じられているが、航空機産業は信頼性が第一なので、もしフォルクスワーゲンが航空機メーカーだったなら倒産は免れない。日本でも、航空機の座席で大きなシェアを持っていたメーカーが、防火性能のデータ偽装が発覚し、撤退に追い込まれている。一方、ボーイング787のリチウムイオンバッテリーの発火問題では、バッテリーメーカーは製造工程のデータ管理がしっかりしていたので、お咎めを受けなかった。

 例会後の懇親会も盛会で、もう一つの国産商用ジェット機ホンダジェットについても話題が盛り上がった。ビジネスジェットとしては、ちょうど二輪メーカーだったホンダが鳴り物入りで四輪に参入したN360のようなものだとのこと。航続距離など本格ビジネスジェットとしては物足りないものの、アメリカに開発拠点を置いたのは正解だったとのこと。中部圏の産業の未来という点では明るい話ばかりではなかったが、航空機産業の比重がますます拡大し、新技術の裾野が広がって産業を変えていくのは間違いないという印象を持った。

(文責:KA)

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2015年11月例会

日 時:11月19日(木)19:00〜20:30
場 所:I.C. Nagoya 教室 (名駅永田ビル 7階)
講 師: 山中 清 氏 (元 三菱重工)
テーマ:「航空機での新たな挑戦(環境負荷軽減航空機の技術動向)」

開催案内

 地球温暖化対策は全産業で取り組まねばならない重要な課題です。航空機においても環境騒音対策と伴に2000年頃から研究開発が始まっています。最近では太陽光パネルを機体表面に装着し発電してモータ駆動で飛行する方式や、さらに燃料電池を電源とした航空機の開発が行われていますが、旅客機に適用するには発電効率と軽量化がさらに進まないと実用化が難しい課題があります。そこで、航空機の装備システムの電気化(More Electrical Aircraft:MEA)によって機体重量軽減を図り、ジェット燃料消費を減らすことで温室効果ガスを少なくする取り組みが盛んに研究された結果、近年の技術革新により、A380(エアバス社)やB787(ボーイング社)などで実用化されました。今回の講演では、MEAの概要と利点、適用事例と今後の技術動向についてお話し頂くと伴に、日本の航空機産業での取組み状況にも言及して頂きます。

 講師は、戦闘機、ヘリコプタ、民間旅客機の設計者として約35年の実務に携わり、特に装備設計の豊富な経験を持たれています。当日は、前述の環境負荷軽減航空機の現状を自動車分野で進むEV化と対比しながら、また現在開発が進められている国産ジェット旅客機の概要にも触れながら、「日本の次世代の産業の核とするために環境にやさしい航空機の開発にむけた技術動向」を紹介して頂きます。

講演内容

 重要な課題である地球温暖化対策の問題は航空機においても避けられず、大量のエネルギーを使う中で環境騒音対策とともに2000年頃から研究開発が始まっています。最近では、旅客機として適用するにはキーポイントの発電効率と軽量化の実用化が難しい問題として立ちふさがっているが、そこに各社は果敢に挑戦している。代表的なのが航空機の装備システムの電気化(More Electrical Aircraft:MEA)により機体重量軽減を図りジェット燃料消費を減らすことで温室効果ガスを少なくする取り組みが盛んに研究されている。現実にも、近年の技術革新によりA380(エアバス社)やB787(ボーイング社)などで実用化されてきている。講演の中でもMEAの概要と利点、適用事例と今後の技術動向について述べて頂いたが、厳しい国際環境の中で頑張る日本の航空機産業での取り組み状況は非常に興味深いものであった。

 講師は、もともと情報ベンダーのシステム開発者から航空機産業への転身をされ、戦闘機、ヘリコプタ、民間旅客機等の設計をされる中、前述の環境負荷軽減航空機の現状を自動車EV化との対比、また初飛行が成功裏に終わったばかりのMRJ開発の現場にも身を置いて来られた。今回の講演では、このようなご経験からの実感のこもったお話を聞くことができ、日本の次世代中核産業として期待される航空機の一端が少し理解できた気がしました。(文責:NK)

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2015年12月例会

日 時:12月16日(水)19:30〜21:00
場 所:I.C. Nagoya 教室 7階教室(名駅永田ビル)
内 容:情報交換市
 会員が最近の話題を持ち寄り、忘年会を兼ねて談義しました。

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