NIMRA 2007年の研究会

  • 年次総会 (2007.1.31)
  • 2月例会:丸山 茂樹 氏「来日外国人に関わる諸問題」(2007.2.28)
  • 3月例会:阿竹 克人 氏「これこそが海上の森、海上人工都市構想について」(2007.3.28)
  • 4月例会:冨田 健嗣 氏「食育がめざすもの」(2007.4.25)
  • 5月例会:山本 綽 氏「先覚的発明王並びに国際人である高峰譲吉博士の秘話」(2007.5.23)
  • 6月例会:紅林 豊 氏「特殊鋼の現状と将来」(2007.6.27)
  • 7月例会:高間 睦 氏「施設介護、3:1の謎」(2007.7.19)
  • 緑蔭講座:「全国町並みゼミ伊勢大会」(2007.9.15-16)
  • 10月例会:高木 伸彦 氏「都市と文化 〜 芸術文化で都市は再生するのか 〜」(2007.10.24)
  • 11月例会:田井 能久 氏「不動産ファンドがもたらしたもの」(2007.11.21)
  • 12月例会:情報交換市(2007.12.5)
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    2007年総会

    日 時:1月31日 19:00〜21:00
    場 所:リビエール(栄)
    内 容:
     2006年決算、2007年役員人事、2007年事業計画について審議し承認を得た。
     会長:阿竹 克人

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    2007年2月例会

    日 時:2月28日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「来日外国人に関わる諸問題」
    講 師:丸山 茂樹 氏(I.C.Nagoya代表取締役、NIMRA会員)
    内 容:
     豊田・三河地域では外国人研修生の虐待や低賃金労働がマスコミをにぎわせ、看護士・介護士の受入れでも様々な議論を巻き起こしている外国人労働者問題を参加者も一緒に討議しました。参加者のテーマへの関心も高く、アメリカの体験をもとに現在の生活水準を維持したいのか、水準低下をを容認出来るのか等具体的なお話も出ました。例会の告知期間が短く、用意した資料10部ほどでしたが、全部無くなる程参加者があり、NIMRA 参加者の関心度の高さが表れていました。
     現在、既に全人口の1%を越える外国人が日本で滞在し、今後も増えて行く事を考えると、対岸の火事ではなく、自分達に身近な隣組の問題として捉えなおしてもらう切っ掛けになれば幸いです。簡単ですが以上報告まで。
    (文責:SM)

     資料として「規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に関する中間答申」(規制改革・民間開放推進会議)の中から外国人分野を抜粋して紹介されました。外国人の権利と義務、子息の就学などを課題として取り上げるに留まっており、具体的な施策が全く白紙状態であるとのこと。日系外国人の子息の人口が既に在日韓国朝鮮人を上回っており、また、不法滞在者の子息の教育問題など、在留外国人の生活に関わる問題が顕在化している現状に対して、政府の対応は全く遅れており、またこの問題をどうして行くのか、我々国民自身のコンセンサス形成が必要であるとの指摘がありました。
     また、関連情報として格安航空便の日本就航の動きが紹介されました。新聞コラム「空飛ぶバス」。空港での折り返し時間を最小限に短縮するなどの徹底したコスト削減により、マレーシア往復1万8千円、シドニー往復6万円などの極低料金での運行を目指すとのこと。受入れ空港として、神戸空港、静岡空港の他、県営名古屋空港も候補に上がっているとのこと。アジア各国間との移動が容易になることにより、国内の外国人問題にも影響が予想されるとのことでした。
    (文責:MT)

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    2007年3月例会

    日 時:3月28日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「これこそが海上の森、海上人工都市構想について」
    講 師:阿竹 克人 氏 ((株)阿竹研究所 所長、NIMRA会員)
    内 容:
     昨年の30周年記念講演会で提案し、機関紙でも小説という形で取り上げた海上都市構想の続編である。海上都市構想としては先輩格に当たるバックミンスターフラーの四面体都市構想、菊竹清訓事務所の構想、どちらかというと造船業界主導で進められていたメガフロート構想なども紹介された。
     阿竹の海上都市構想は人口爆発、食糧危機、エネルギー危機を克服して21世紀に100億人以上が地球に住むためのゼロエミッション都市構想で、地球外にスペースコロニーを建設するよりはずっとハードルの低いオーシャンコロニーである。もともと既存の都市の再開発として考えられた高密度森林都市構想を海上に移動したもので、次にあげるいくつかの技術開発をともなっている。
     1.水平にも動けるロボット化されたリニアモーターエレベータ。
     2.太陽光を高効率で利用し海水から水素をとる人工光合成技術
     3.太陽エネルギーを利用して海水からマグネシウムなどの資源を取り出す技術
     4.屎尿等有機廃棄物を海洋生物資源と太陽光を利用して食料再生産につなげる技術
     5.海上都市をつなぐ太陽熱飛行船。

     太陽エネルギーの有効利用で太陽電池は紫外線部分しか利用していないのに対し、光合成の優れているところは可視光線を中心とした幅広い帯域をエネルギーに変換していることで、幅広い帯域をエネルギーに変えるオーストラリアのソーラーチムニー構想も質疑の中で紹介された。
     能登半島地震の直後であったが、海上都市は究極の免震構造で大きくなれば台風でもほとんど揺れないことはメガフロートでも実証されている。また津波の大きさは海の深度で決まるので、沖に出るほど影響が小さくなる。阿竹の海上都市構想は沖ノ鳥島沖に作られ、大きな環礁と礁湖を持っていることが特徴で、礁湖部分に人工光合成装置やバイオ浄化装置が組み込まれ、この部分が本体への浪の影響を押さえ、都市周辺の親水性を確保している。
     日本最南端の沖ノ鳥島はわずかに二つの岩礁が環礁のなかに残っているのみで、地球温暖化で沈みゆく南太平洋の環礁の島々の先行指標であり、この技術開発はそれらの国々への先進国の贖罪でもある。
     とりあえず人口三万人を目標にしているので、今後三万人都市の数量的なデータ収集など、基礎的な研究が必要ということになった。二千年会は会場をうつして生物環境への影響等についても議論された。
    (文責:KA)

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    2007年4月例会

    日 時:4月25日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「食育がめざすもの」
    講 師:冨田 健嗣 氏(冨田歯科院長、NIMRA会員)
    内 容:
     テレビ番組捏造による納豆事件では、健康情報に関するメディアの信用問題もあるがその情報を鵜呑みにした消費者側の問題も浮かび上がらせた。また食品メーカー不二家の事件では、消費期限を守らないことに批判が集中した。食の安全基準は現場の職人の五感ではなくコンピュータ画面で判断されているというが、絶対的に安心とは言えない。ある農業ジャーナリストは、「食べる」という身近で個人、生命に関わる事をまず足元に取り戻すことから始めようと警告している。
     2006年版の内閣府の食育白書から最近の食生活の現状を示している興味深いデータを抜粋し参加者とともに議論した。近年、ライフスタイルの多様化で国民の食生活の状況は大きく変化している。外食や中食(なかしょく)による食の外部化率が増加している。中食とは、総菜や弁当、調理食品を家に持ち帰って利用することである。中食の増加は経済的理由や料理、食事の片付けの手間を省く簡便化志向を示している。また単独世帯が増加しており、家族と楽しく食卓を囲む頻度は減少傾向であり、いわゆる「孤食」、「個食」が増加している。特に問題視されていることは、若年層における朝食の欠食率の増加である。毎日朝食をとる子供ほどペーパーテストの得点が高い傾向があった。男性では全年齢層で肥満者が増加し、女性では?身志向の影響もあり肥満者は減少していた。世界中で約8億人が飢餓や栄養不足で苦しんでいる状況のなか、我が国では食べ残しや食品廃棄を大量に発生している問題を抱えている。日本の食料自給率はカロリーベースで40%であり海外への依存度が高い。国内で見ると、北海道200%、愛知13%、東京1%など非常にバラツキが大きい。
     このような食生活の現状に鑑み、2005年7月に食育基本法が施行された。食育は、食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を身に付けさせる教育である。食育推進基本計画では食育を国民運動としてまず平成18年から22年までの5年間を対象としている。また農林水産省・厚生労働省が作成した食事バランスガイドを参考にして日本型食生活の見直しを図っている。主食、主菜、副菜、乳製品、果物に分類し、1日分の料理数を例示している。これは日本のお膳を意識したものであり、実用的な料理別表示は世界初の試みである。
     平成18年度の食育関連予算の内訳を見てみると、最も予算額が多かったのは農林水産省、順に文部科学省、厚生労働省であった。食育基本法という広範囲の内容を含んだ法的根拠を基に、我が国の農林水産業をはじめ多くの食産業の掘り起こしがうかがえた。
     この4月に、今後10年間を対象とした「新健康フロンティア戦略〜健康国家への挑戦〜」が打ち出された。この中に食育の推進(食の選択力)も盛り込まれている。国は次々と戦略的かつ重点的に健康・福祉に関する国民運動を推進しようとしている。食育がめざすものとして、食の躾や人間形成を通して我が国の安心・安全・信頼のある社会づくり、文化づくりが見えた。
    (文責:KT)

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    2007年5月例会

    日 時:5月23日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「先覚的発明王並びに国際人である高峰譲吉博士の秘話」
    講 師:山本 綽 氏(新日本化学工業株式会社前社長 現顧問、酵素研究者)
    内 容:
     明治・大正の時代を生きた高峰譲吉は、科学技術と産業をともに手にした最初の日本人です。酵素「タカヂアスターゼ」を発見し、「アドレナリン」を最初に結晶として抽出したことで世界のバイオテクノロジーの窓を開けると同時に、研究開発が産業と結びつけば、巨大な富を生むことを実証して見せてくれました。また、三共製薬の初代社長にして二十世紀初頭の世界をリードした高峰は、政府役人、科学者、実業家、“日米親善特使”の四つの顔をもちつつ、米国人女性と結婚し、日米の融和に尽力した国際人でもあります。
     高峰讓吉は、ペリー来航の翌年1854年9月13日に現在の富山県高岡市で医師の家系に生まれ、幼少の頃から学問を学び、金沢の明倫堂、長崎へ英語留学、大阪の適塾を経て、工学寮工部大学校に一期生として官費入学、25才で英国留学、3年後に農商務省工務局勤工課に配属された、日本で最初のエリート技術者である。30才の時、米国ニューオーリンズ万博で日本館を担当した際にリン酸肥料を知り、私費で10トンのリン燐鉱石を買い付けて日本に持ち帰り、日本での人工肥料の先駆けとなった。また、米国で特許制度を学び、日本の特許制度構築の中心人物としても活躍した。また、米国滞在中に当時十八歳だったキャロラインと知り合い、後に結婚することになる。これは国際結婚のもっとも早期の例であった。
     高峰の仕事は、単に技術者や役人に留まらず、自らの開発した技術と特許制度を駆使して、企業家として活躍するようになる。32才の時、益田孝とともに自費洋行し、仏独英米で肥料問題を視察、米国で肥料製造用機械を購入し、33才の時、人造肥料の製造販売を開始。これを機に、農商務省を辞職し、人造肥料会社に全力を振るい始めた。澁澤榮一、益田孝、馬越恭平など企業家の援助によって『東京人造肥料会社』(後の日産化学工業株式会社)を設立。また、醸造法の特許を在英中に出願し、34才の時「高峰式元麹法」が米国特許に登録。米国で醸造会社を設立した。しかし、既存のモルト業者の反発が強く、暴漢に襲われたりするなど事件が相次ぎ、遂には、不審火で工場が焼失してしまう災難に遭って、「高峰式元麹法」による醸造を諦めざるをえなかった。苦難と激務によって、持病の肝臓病が悪化したが、キャロライン夫人の献身でなんとか持ち直した。その後、貧困と闘いながら麹に関する研究を継続し、タカヂアスターゼの発明にゆきつく。39才、タカヂアスターゼの米国特許を出願し特許がおりた。百年以上も経た現在でもなお、胃腸薬として大量に売られている。その後、グリセリンの回収法や、アドレナリンの純粋抽出法を相次いで発明し、その特許収入によって莫大な富を手にすることになる。米国ではパークデービス社にタカジアスターゼをライセンスし、日本では三共商店(現在の三共株式会社)にアドレナリンの専売権を与えた。アドレナリンは、百年後の現在でもきわめて広範囲に使用され、止血、血圧低下への措置など、外科手術には欠かすことのできない医薬品である。またこれは、ホルモンの史上初の純粋抽出であったことが、高峰の死後、明らかになった。
     高峰讓吉は、特許で得たこの巨額の資産を、米国における日本理解や、日本の科学技術振興の為に投じた。彼が豊田佐吉にフォードを一台贈ったのがきっかけで今のトヨタがあるとも言われている。日露戦争時に米国の世論を日本の味方につけるために、日本政府の依頼を受けて、私費を使って奔走した。また、死の直前、加藤高明の頼みにより米国大統領宛の親書を渡している。
     ワシントンD.C.のポトマック川にある美しい桜並木は、1912年に東京市長の尾崎行雄の発案で高峰譲吉によって寄贈されたものである。高峰譲吉は、政府役人、科学者、実業家、“日米親善特使”の四つの顔をもち、日米の融和に尽力した国際人である。
    (文責:TS)

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    2007年6月例会

    日 時:6月27日 19:00〜21:00
    場 所:矢作葵ビル(株) 本社会議室
    テーマ:「特殊鋼の現状と将来」
    講 師:紅林 豊 氏(大同特殊鋼(株) 研究本部 自動車用鋼研究部 部長)
    内 容:
     鉄の旧字体「鐵」が「金・王・哉」に分解できることから本田光太郎は「鐵は金の王なる哉」と評した。しかし、新字体では「金を失う」となるため鉄道関係者などでは忌み嫌う傾向も見られる。鉄鋼の中で特殊鋼とは何か、厳密な定義はないが、普通鋼との成分比較では炭素の含有量が多く鉄元素以外にモリブデン、ニッケルなどの合金元素が多量に加えられている点や、また、圧延されて出来たもの(スラブ等)を熱処理せずにそのまま使用するのが普通鋼、熱処理されたものを特殊鋼として区分することが出来る。
     年間の鉄鋼材料の生産量は全世界で約12億トン、日本は1億トン強(世界の10% 弱)であるが、特殊鋼で見ると世界で9000万トン、日本は1400万トンであり、自動車産業などで使用される高強度部品の需要の影響により特殊鋼の比率が高いのが特徴である。
     生産量の内訳をみると一位が中国で4億2000万トン、二位はEUの2億トン、三位はアメリカ1億3000万トン、四位が日本、五位が7000万トンのロシアの順になっている。中国では2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博に向けたインフラ整備のため急速に生産量を高めて来たが、2010年以降に需要が減少して余剰分が輸出に回されることが懸念され、世界のとりわけ日本の鉄鋼業界にとっては大きな問題である。
     金属は古来より金、銀、銅が使われ鉄はかなり遅れBC1500年頃ヒッタイト人によって製造され使用されるようになった。これは融点の違いにより融点の低いものから順に手に入れていったものと思われる。ちなみに金の融点は1063℃、銀960℃、銅1084℃、鉄は1536℃であるが、鉄は炭素含有量が4%(銑鉄)では融点が1150℃まで下がる。
     鉄は最も安価で大量に手に入る金属であるが、その強度はピアノ線の400kg/o2が現時点での最高強度で、理想強度の1400kg/o2の約1/4である。鉄原子配列の中に炭素のような大きさの違う原子を入れることによって歪みが生じ硬く強くなる。物質は自然界の法則に従うと温度が下がることで小さく重くなるのが一般的であるが、鉄は金属の中では異端児的な存在であり、鉄鋼材料ではゆっくり冷やされると、本来は結晶構造が密になって比重が上がるはずのものが逆転する現象が出てくる。また一気に冷やす(焼きいれ)と炭素が鉄の結晶構造に入り込み、膨張する現象が現れる。また炭素が多くなればより大きな膨張となる。これは他の金属には見られない現象であり、水と似通っている。
     日本刀は鉄鋼材料の最たるもので、切れ味がよく折れないものが求められるが、刃先には硬く切れ味がよい(折れ易い)ものを、背の部分には刃先を保護する柔らかくしなやかな材料が使用された複合材料である。又、反りは焼入れの祭に炭素量が多い刃先部分の膨張が大きいために生じる現象である。
     特殊鋼の用途は広範囲であり、自動車を例に取ればエンジンや変速機内部の重要部品から軸受けやばねなどに用いられ、車1台でみると普通鋼が全体の50%あり、特殊鋼が17%の使用比率となっている。鉄需要に占める自動車の比率は大きく、特殊鋼材の生産量は自動車生産量の推移とほぼ同様である。今後、材料の高強度化で環境対策と安全対策に寄与し、国際競争力を維持していかなければならない責務がある。また、自動車以外でも風力発電や新幹線部品など絶対的な信頼性を問われるものからボールペン等の日用品に至るまで必要不可欠なものとなっている。
     鉄鋼製品の製造方法には鉄鉱石を高温の熱風で溶解する高炉製法とスクラップを電気炉で溶解する電気炉製法とがあるが、大同特殊鋼や愛知製鋼は後者のほうである。電気炉製法は選別されたスクラップを6KVAのアークによるジュール熱(1550℃)により溶解し、不純物の除去と合金の添加によって製造される。
    (文責:HM)

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    2007年7月例会

    日 時:7月19日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「施設介護、3:1の謎」
    講 師:高間 睦氏(中日新聞社 編集局 生活部 記者)
    内 容:
     国が介護保険制度で定めている、要介護者3に対して職員1の最低人員配置が、介護現場の環境を悪化させています。今回は、永年、介護福祉の現場を取材されている中日新聞編集局生活部、記者の高間睦氏をお招きして「施設介護、3:1の謎」をテーマにお話し頂きました。
     最初に、高間氏は、今まで介護福祉の現場を取材して、印象残ったことを回想録的に語られました。最近、認知症の方と一緒に韓国旅行をして、楽しく取材できたことや、取材の現場から切々な思いの詰まった手紙を受け取り、感銘したこと、認知症の方のオムツを付ける割合を減らす工夫をしている施設に感心したことなどです。
     次に、「施設介護、3:1の謎」について、ある特別養護老人ホームの勤務表を例にとって、説明されました。要約すると、国が介護保険制度で定めている、要介護者(入所者、住人ともいう)3人に対して介護・看護職員1人の法定人員配置が、認知症の入所者が多い(あるいは、これからも増えていく)現状を無視した無謀な規定であるということです。つまり、認知症の介護は、現状、現実的に(勤務表からも明らか)、ほとんど24時間対応勤務が必要であり、一般常識(1日8時間労働)からすれば、3:1体制でも、人員は3倍の1:1、入所者の数だけ職員が必要になる。そこが謎、不可解だということです。国からの介護報酬は決まっている(固定的)なので、結果として、職員の給与水準、意欲の低下、ベテランの離職、非常勤の採用増にとなり、介護現場の環境、サービスの悪化に、歯止めがかからなくなる恐れがでてくるのです。スエーデンではその点、1:1体制で夜勤の人員も多いということでした。解決策の例として、施設と土地にお金が掛かりすぎ(掛けすぎ)なのも問題なので、土地を行政が寄付し、運営を民間が行っている(公設民営)の多治見の施設の例が紹介されました。
     最後に、高間氏が言われた「(国の介護保険)制度が変わるたびに、言葉(スローガン)はきれいになるが、(そのたびに)お金が出て来なくなっている」の一言は、考えさせられます。
    (文責:YH)

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    2007年 緑蔭講座

    開催日:9月15日(土)16日(日)
    行き先:三重県伊勢市
    テーマ:「全国町並みゼミ伊勢大会」
    行程:
     9月15日(土)
      13:30〜17:30 全国町並みゼミ伊勢大会第5分科会(於伊勢二見町 賓日館)
      18:30〜26:00 ゼミ歓迎懇親会および部門別交流会(夜なべ談義)
     9月16日(日)
       9:00〜12:00 全国町町並みゼミ伊勢大会全体総括(於伊勢観光文化会館)
      13:00〜15:00 遷宮御用材工作工程見学(於伊勢神宮司庁山田工作所)

    訪問先決定経緯:
     2年前の緑蔭講座で「伊勢河崎商人館」をお世話いただいた皆さん(高橋徹氏、吉川真智子氏)から平成19年度の全国町並みゼミを伊勢に誘致したことで、町づくり研究を主テーマに掲げるNIMRAへも参加のお誘いを受け、今回の訪問地に決定。

    参加所感:
    @全国町町並みゼミについて
    ・記念すべき30回を迎える「全国町並みゼミ伊勢大会(9/14〜16,於伊勢市、NPO全国町並み保存連盟主催)」は、北海道から九州、沖縄まで参加63団体延べ500人(スタッフ含む)を越える参加を得て盛大に開催された。そのゼミを通して有益な町づくりの情報交換がおこなえた。
    ・地元伊勢市始め8地域からの地域報告・伊勢市内の町並み見学を含む9分科会での実践的町づくりの取り組みをテーマに全体討議も活発に行われ、次の機会に「伝統的建造物保存の地区指定」を目指す町づくりメンバーに、課題解決のヒントをもたらしてくれる有意義な討議となった。
    ・各地域の町づくりにかける特別の思いは、分科会のみならず夜の懇親会(夜なべ談義)でも花盛りで、夜更け(朝2時)迄語り合う程の熱きものであった。
    A施設見学(遷宮御用材工作工程見学 於伊勢神宮山田工作所)
    ・外宮の西に隣接する広大な敷地を占める山田工作所は、ご遷宮の御用材工作をする神宮支庁の工作所の中でも最大規模を誇る施設で、貯木場・木挽き小屋(製材書)・鉤小屋、乾燥小屋、御萱薫蒸場などからなる建物群で構成されている。
    ・正面入り口の事務所棟には、資料室が併設されており神宮のお社で実際に使われていた実物の鰹木、金物類など(過去の遷宮で撤去の品々)を見ることができた。
    ・こうした特別な機会であったため許可を得て見学できたことは僥倖であった。
    (文責:NK)

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    2007年10月例会

    日 時:10月24日 19:00〜21:00
    場 所:大名古屋ビル ICNAGOYA教室
    テーマ:「都市と文化 〜 芸術文化で都市は再生するのか 〜」
    講 師:高木 伸彦 氏(愛知県文化芸術課、NIMRA会員)
    内 容:
    近年、まちづくりの中で、芸術文化の役割が大きくクローズアップされています。首都圏の森美術館や国立新美術館は、都市開発の要として計画され、抜群の集客力を誇っていますし、地方においても、金沢21世紀美術館や青森県立美術館、九州国立博物館など最近開館したミュージアムは、地域の魅力度アップに大いに貢献しています。一時期、日本全国に続々と建設され、箱物行政の典型と揶揄されたホールも、ソフト面を強化して地域に根ざした活動を展開する館もあらわれています。地域間競争においても、芸術文化の果たす役割は、ますます大きくなっていると考えられますが、一方で、全国の美術館・博物館の入場者は、毎年、漸減していっているという現実があります。これからの日本の社会の変化の中で、はたして芸術文化が都市を再生し、その魅力を増すための必須の要素となるのか、講師から話題提供をさせていただき、参加者の皆さんとのフリートークの中で考えていきたいと思います。
    (文責:NT)

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    2007年11月例会

    日 時:11月2日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「不動産ファンドがもたらしたもの 〜プライベートファンドの現場から〜」
    講 師:田井 能久 氏(不動産鑑定士 不動産コンサルタント)
    内 容:
     現在の我国の不動産事情は、バブル崩壊による未曾有の混乱期は脱したものの以前とはその様相を一変させています。この要因の1つに一連の規制緩和による不動産の証券化があげられます。即ち、REIT(不動産投資信託)やプライベートファンドなどのファンドによる投資の増大が、以前の個別不動産への実物投資の時代と様相を一変させているようです。今回は、このような日本の不動産事情の変化、グローバル化の実情を国内外の事例も交えお話し頂きました。
    @不動産の鑑定評価とは
     鑑定評価の意義や1物4価と言われる不動産価格の本質、とりわけ時価について、不動産鑑定士の実務も交えて解説頂きました。
    A不動産ファンドとは
     不動産ファンドの仕組みや特徴について、投資判断に当って、不動産鑑定士、弁護士、公認会計士が分担して行うチェック業務の内容を解説頂きました。
    Bファンドがもたらしたもの
     価値尺度の統一化(坪単価などから利回りによる比較へ)が他の金融資産や投資行動との比較を容易にし、これが不動産の金融商品化や投資行動の国際化をもたらした旨を、解説頂きました。
    C今後の展開
     会社法やSPC法の規制緩和、投信法や金商法の規制強化などが不動産金融商品を更に高度化・複雑化させ、これにより見えないリスクを発生させてくる(サブプライム問題もその1つ)。よって、業界常識と国際常識の差異を認識する(上場REITの状況を見ても日本・米国・欧州各国では大きな違いがある)ことと、国際的に見て優れた不動産の商品開発が必要であることを、解説頂きました。

    [講師略歴]
     田井氏は名古屋市ご出身。H3年大学卒業後(財)日本不動産研究所入所。H16年ハドソンジャパン債権回収(株)(現 ハドソンジャパン)入社。H18年名古屋に戻られ(株)タイ・バリュエーション・サービシーズを設立。日本不動産研究所在職中は鑑定評価業務を約1000件担当。その他、地価公示、国税、固定資産税等の公的評価も担当。ハドソンジャパンではNPL(不良債権)チームに所属。担保不動産のデューディリジェンス(評価・調査)を主たる業務とし全国主要都市を中心に約500件担当。幅広い業務経験を積まれた実力派の不動産鑑定士です。
    (文責:NS)

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    2007年12月例会

    日 時:12月5日 19:00〜21:00
    場 所:千種 菊半
    内 容:情報交換市
     居酒屋にて、活発に情報交換を行いました。

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