NIMRA 2006年の研究会

  • 総会 (2006.1.25)
  • 2月例会:丸山 茂樹 氏「日本の10年後」を考える ー外国人労働者問題と小さな政府ー」(2006.2.22)
  • 3月例会:林 清隆 氏「アジアのまちづくりと日本の役割り」(2006.3.22)
  • 4月例会:冨田 健嗣 氏「要介護認定の仕組みと介護予防の考え方」(2006.4.26)
  • 5月例会:山田 吉孝 氏「光子の裁判〜光の正体は波なのか粒なのか〜」(2006.5.24)
  • 6月例会:藤野 伸司 氏「鉄と鋼の話」(2006.6.21)
  • 緑蔭講座:上坂 卓雄 氏「出石町、城下町を活かす町づくり」(2006.9.16)
  • 10月例会:榊原 正三 氏、石川 太久治 氏「新月伐採と履歴の分かる住まいづくり」(2006.10.25)
  • 30周年記念講演会:まちづくり講演会 (2006.11.23)
  • 12月例会:情報交換市(2006.12.6)
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    2006年総会

    日 時:1月26日 19:00〜21:00
    場 所:リビエール(栄)
    内 容:
     2005年決算、2006年役員人事、2006年事業計画について審議し承認を得た。
     会長:阿竹 克人

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    2006年2月例会

    日 時:2月22日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「日本の10年後」を考える ー外国人労働者問題と小さな政府ー
    講 師:丸山 茂樹 氏(I.C.Nagoya代表取締役、NIMRA会員)
    内 容:
     愛知県は経済が好調であり、昨今の有効求人倍率は1.6倍と活況を呈しているが、逆に言えば求人に対して60%の労働者が不足しており、これを外国人労働者で補充しているのが現状である。愛知県下には、既に日系ブラジル人およびペルー人が80,000人近く、フィリピン人が15,000人在留しており、労働力不足を補っている。
     平成18年2月16日の日経新聞コラム「人工減と生きる1」にも解説されているように日本は2005年から人口減少に突入しており、大きな変革社会を迫られている。日本の10年後を考えた時、文芸新書「10年後の日本」(日本の論点編集部編)にも示唆されているように、移民開国は避けられない状況に来ている。
     去る2月15日に開かれた平成18年第3回経済財政諮問会議においても、グローバル戦略の重要課題として、東京大学教授の伊藤元重氏から、近年の婚姻者100組の内5組が国際結婚であるとの現状を指摘した上で、外国人の受け入れ問題について期限を切って結論を出すことが必要であるとの厳しい提言がなされている。(資料はインターネットで自由に閲覧可)
     外国人雇用に伴う課題として、例えば、子息の就学、治安維持、健康保険などがあり、これらに対処する為に、地方自治体に財政負担が必要となる。小さな政府を推し進めて行く中で、外国人受入れ財源をどのようにして確保して行くのかについて今すぐにでも議論を始めなければならない。 背景として、大企業のコスト削減要求が結果的に下請け企業へ外国人労働者の受入れを迫って来たこと、そして、その為のコストを地方自治体ひいては国民が負担する構図になっていることを認識すべきである。
     少子高齢化に伴いこれから遭遇するであろう未知の諸問題に対して、日本は欧米各国に比べて余りに無防備かつ無研究と言わざるを得ない。場当たり的、対症療法的な対応が通用しない時代になって慌てふためかない為にも、国力が残っているうちに、国民の啓蒙と合意形成が必要である。
     中日新聞3月3日朝刊の外国人学校の認可緩和に関する記事、日経新聞3月7日朝刊の外国人労働者受入れに関する記事なども参考にして頂きたい。
    (文責:SM)

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    2006年3月例会

    日 時:3月22日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「アジアのまちづくりと日本の役割り」
    講 師:林 清隆 氏((株)国際都市政策研究所 代表取締役所長、NIMRA会員)
    内 容:
     現在、世界の人口は65億人を超えたところで、30-40年後には100億人を超えると推計されている。アジアにはこの過半数を超える人口があり、特に中国では13億人、パキスタン、バングラデシュを含む旧インド圏で13億人近くになっており人口爆発は深刻なものである。この狭い地球にどれだけ人口が住めるかは色々と予測されているが、一説では600億人ぐらいは住めるという仮説もある。しかし、食料の限界、環境への影響などによってそこまで住めるとは想像もつかない。バングラデシュは北海道と同じほどの面積に1億3千万人の人間が住んでいる。首都ダッカは1,000万人の大都市だが、半分ほどはスラムに住み悲惨な居住環境を呈している。こんな状況では健全な人類の生存はありえない。
     日本など先進国の都市化率は70-80%でほぼ飽和状況であるが、アジアの途上国は30%前後でこれからも都市の膨張が始まる。巨大人口を抱える中国やインドが最近は急速な経済成長を見せているが、都市化のエネルギーも急激であり、地球環境への影響はもとより都市拡大の混乱は相当のものが予測される。現在でもマニラ、ジャカルタ、バンコクなどアジアの巨大都市は急速な都市拡大を短期間に成し遂げ、多くの都市問題を派生させている。交通渋滞、スラム、環境汚染など都市を取り巻く課題は山積している。日本を取り巻くアジア諸国に深刻な都市問題を抱えた都市を放置しておくことは日本にとっても国際化時代の進展の中にあって直接、間接的に大きな影響を及ぼすことと思われる。
     多くの日本人にとって観光や仕事でこれらの都市に行く機会は増え続けているが、治安的にも安全な都市、便利な交通体系、快適な都市環境は、日本人にも大きな便益となることであろう。シンガポ−ルやクアラルンプールなど安全で魅力ある都市がある一方、治安面、交通渋滞、住環境などで深刻な状況に直面している都市は多い。アジアの中でも唯一の先進国であり、アジアとの連携なくしては日本の経済的発展はありえない。経済的な進出のみならず日本のまちづくりの経験をアジア諸国に提供することは重要なことといえる。 国際協力であるODAは単なる資金的な援助のみでなく日本の経験を踏まえて技術や制度を現地の実情に合うように導入すべきものである。
     国際協力においていつも問題になるのは言葉の問題である。世界の共通語が英語になりつつあり、致し難い事かも知れないが、アメリカやイギリスの言葉で日本の国際協力を進めるには一抹の矛盾を感じる。日本の国際協力は日本語でやるべきなのではないであろうか。そうすることによって日本発の発想と経験が自然に伝わるようにも感じる。日本語は発音としては世界でも最も簡単であるので世界の共通語になる素地を持っている。日本語の難しいのは漢字であるので漢字をやめれば外国人にとって非常に簡単になるし、日本人にとっても学習の負担が減ると思われる。漢字に馴染んだ我々の世代も、最近のワープロ全盛の時代では字は読めても書けなくなってきている。ローマ字にするか、かな文字にするか、あるいは同音異義語をどう区別するかは議論の余地はあるが、言葉はコミュニケーションの手段と割り切れば簡単な方が望ましいものと思う。独自の表音文字を使うハングル語やタイ語はわずかの限られた字数でもほとんど読めない。同じ漢字文化圏であったベトナムはフランスの植民地化によってローマ字化され、6種類の声調も記号を付加することによって言葉としての独自性を保っている。日本の漢字だって千数百年前に中国から借りたもので、日本の独自性から見たらノシを付けて返しても良い時代になってきたともいえる。
    Kokusai ka jidai niwa kanji dewa naku, Ro-maji ni yoru nihon go hyouki ga fukaketsu desu. Saisho wa yomi zuraku tomo, nan kai mo miru uchi ni wakari yasuku natte kuruto omoi masu. Hayashi Kiyotaka
    (文責:HK)

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    2006年4月例会

    日 時:4月26日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「要介護認定の仕組みと介護予防の考え方」
    講 師:冨田 健嗣 氏(冨田歯科院長、名古屋市介護認定審査会委員、NIMRA会員)
    内 容:
     世界で最も速い速度で高齢化が進んでいる日本において、介護保険の要介護認定者数は、2015年では現在の約1.5倍の650万人にも上る推定がある。要介護の原因疾患は、多いものから順に脳血管疾患、高齢に伴う衰弱、転倒骨折、認知症である。特に、認知症の高齢者数は、増加の一途であり、認知症による徘徊、被害妄想、不潔行為等の問題行動は、介護の手間を増加させるために、要介護度はより高くなってしまう現状がある。
     介護保険制度は施行されて5年経過し見直しがなされ、2006年4月から改正された。従来までの課題としては、介護予防の効果が上がっていないこと、死亡原因疾患と要介護原因疾患は異なること、高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であることが明らかになった。すなわち、要支援、要介護1の軽度要介護者が全体の約5割を占め、これら軽症者に対するサービスが利用者の状態の改善につながっていなかった。要介護の原因としては、特に廃用症候群(生活不活発病)がクローズアップされてきた。そこで、今回の改正では、介護予防という考え方に重点が置かれた。要支援になるおそれのある者に対しては地域支援事業、要支援者に対しては新予防給付、そして要介護者に対しては介護給付があてられる。これらは一貫性、連続性のある総合的な介護予防給付システムを目指している。
     昨年から、名古屋市介護認定審査会の委員として地区の要介護認定に関わっているため、要介護認定の仕組みについて紹介した。利用者の申請を受けて、市町村職員による基本調査や主治医意見書を基にコンピュータによる統計学的な要介護基準時間の推計に
    より一次判定を行い、さらに介護認定審査会で二次(最終)判定を行う。特に、状態の維持、改善の可能性に係わる生活機能の審査が追加され、要支援者の認定は十分に配慮されているものに変更された。
     今回、導入された新予防給付サービスは、運動機能向上、栄養改善、口腔機能向上である。食事は高齢者の最大の楽しみである。加齢に伴い咀嚼・嚥下機能が衰えてくると、食欲の低下も併せて満足のできる食事がなされない可能性がある。死亡原因の一つである誤嚥性肺炎も見逃せない。身体は健康であっても口は寝たきりといった状況がある。口腔機能向上とは、口腔ケアと摂食・嚥下機能訓練を指す。調査研究で、専門的な口腔ケアによって肺炎発症やインフルエンザ発症が抑制されることが明らかにされている。摂食・嚥下機能訓練として、DVDビデオを用いて嚥下体操を紹介した。嚥下体操とは、嚥下の際に働く口唇、頬、あご、唾液腺のマッサージ、舌体操、及び発声訓練である。参加者の皆様とともに音楽に合わせて実演した。顔、あご、首等の様々な筋肉が摂食・嚥下時に働いていていることを確認して例会を終了した。
    (文責:KT)

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    2006年5月例会

    日 時:5月24日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「光子の裁判〜光の正体は波なのか粒なのか〜」
    講 師:山田 吉孝 氏(名古屋市科学館 学芸員)
    内 容:
     まず前段で名古屋市科学館の施設と組織の紹介があった。名古屋市科学館はほぼすべての名古屋市民が一度は行ったことのある場所であるが、昭和37年に開館して以来、ある意味では中部の産業を下支えしてきたともいえる。年間の入場者数は60万人を超え、上野の科学館を抜いて日本一になったこともある国内最大級の施設である。企画を外部委託する科学館も多い中、14名の学芸員がプラネタリウムなどの企画をオリジナルで展開している。今年の元旦には関係者も知らないうちに建替え構想が中日新聞を飾ったが、以前から理工館と天文館の老朽化が言われているのでこれを機に構想が加速するとよいとのことである。
     後半は演題となっている量子力学の世界を直接目で見ることができる実験が行われた。これは名古屋大学の研究施設で廃棄されかけていた光子を一つづつ感知することのできる装置を利用した実験で、タイトルは朝永振一郎さんの随筆による。(ちなみに朝永さんの随筆では「被告は波乃光子という女のような名前」と書かれていて、「みつこ」と読ませる意図があったそうです。) ニュートンが粒子説を主張したためそれ以前に波動説を唱えていたフックの肖像が抹殺されてしまったなど高校生対象に二時間くらいかかる科学史の講義を、はしょって面白く見せていただいた。質問では科学的な実証の立場から意地悪な質問もあり、意外に科学に強い会員が多いことがわかった。
     子供の理科離れといわれるが、進学校を中心に受験勉強を優先するあまり実験をしない学校が増えている現象があり、子供の理科に対する好奇心は昔とかわらないそうで、理科離れをとめるなら、企業の研究職のフィーをスポーツ選手なみに上げればよいという意見が印象に残った。
    (文責:KA)

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    2006年6月例会

    日 時:6月21日 19:00〜21:00
    場 所:矢作建設工業本社 会議室
    テーマ:「鉄と鋼の話」
    講 師:藤野 伸司 氏(新日本製鉄(株)名古屋製鋼所 製鋼工場長)
    内 容:
     日本の鉄鋼メーカーの中の最大手である新日本製鐵、その中核をなす名古屋製鐵所は中国特需の追い風もあり、フル生産状態にある。鉄づくりには大掛かりな設備が必要で、大きく分けると鉄鉱石を溶解し銑鉄を取り出す製銑部門、溶鉄より不純物を取り除き半製品の鋼にする製鋼部門、鋼を圧延し製品にする圧延部門からなる。今回の講師は製鋼部門を統括する責任者で、匍匐前進(飛躍的な改革は難しく、小さな改善を積み重ねてこれを繰り返すことが大きな飛躍につながる との意)を座右の銘とし、運営上の課題でもある世代交替要員のスリム化の中の製造実力向上、コスト競争力や日々の安全活動など生産のベースとなる地道な活動に力点をおきながら増産体制を維持しているとのことである。
     鉄の埋蔵量は一体どれくらいなのか、それは定かではないがクラーク数(地球上の地表付近10マイルに存在する元素の割合を重量%であらわしたもの)では、酸素、珪素、アルミニウムに次ぎ、4番目に多い元素であり、ほとんどはFe3O4(マグネタイト)Fe2O3(ヘマタイト)などの酸化物として存在し、その量や加工性の高さから様々な器具や構造物など最も利用価値があり産業の中核をなす材料として「産業の米」などと呼ばれその生産量は国力のバロメーターともなってきた。
     製造プロセスとして高炉では還元された鉄鉱石を溶解させ溶銑として取り出します。溶銑は炭素含有量(約4.5%)が高いため硬く、さらに不純物が多いため圧延して製品とすることはできない(鋳物としてマンホールの蓋や南部鉄瓶等に使用される)、一般に言う鉄とは鋼を指し名古屋製鐵所での製造プロセスを紹介すると溶銑を予備処理炉でSi,Sなどの不純物を酸化除去(純酸素を吹き付ける)した後に転炉で炭素、P等を酸化除去するとともに必要な成分(Mn,Cr,Moなど)を添加する、その後の二次精錬設備(RH:真空脱ガス装置など)で溶存するガス(O2,N2など:ガスも不純物)を除去するとともに必要な合金元素を加え成分の最終微調整をする、その溶鋼を連続鋳造設備で厚板状などの半製品(形状によりスラブ、ビュレット、ブルームと呼ばれる)となり、これを圧延加工して所定の形状の製品となる。製品の流通経路には主に@一般流通市場向け(鉄鋼メーカー→大手商社→鋼材加工販売業者→ユーザー)とA特定需要家向け(鉄鋼メーカー→特定需要家)があり、特定需要家向けを「紐付き」販売といい、自動車、家電、造船などの大口需要家の間で規格、価格、鋼材生産の仕掛り日数(40日程度)等が直接決められている。
     世界の主要鉄鋼メーカーに於ける日本の実力は粗鋼生産量で新日本製鐵が第3位、JFEスチール第5位、住友金属工業15位、神戸製鋼所33位となっているが、第1位のミタルスチールと第2位のアルセロールとが合併するとの情報(6/27報道では合併)もあり、国内メーカー再編や防衛の動きも活発化するものと思われる。日本の技術力面では韓国、台湾、ブラジル等のいわゆる製鉄中進国と比較すると自動車用高張力鋼板などハイグレードな価値の高い製品の製造技術では他の追従をゆるさず、現在ミドルハイグレードに特化し、輸入品との差別化を図っている。
    (文責:HM)

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    2006年緑蔭講座

    開催日:9月16日(土)17日(日)
    行き先:兵庫県豊岡市出石町
    テーマ:「城下町を活かす町づくり」
    講 師:上坂 卓雄 氏(出石城下町を活かす会 元会長
        出石町観光協会 顧問、出石町商工会 顧問、出石まちづくり公社 取締役)

    講師紹介:
     昭和50年頃まで出石町は、観光客がほとんど訪れることはなかった。そんな町を観光客が年間100万人訪れる町に変貌させた。
    a.観光協会、商工会の改革
     昭和48年から町民へ観光協会参加の呼びかけ、商店・サラリーマン・医者・町議会議員などの様々な職種の異なる人々、約400名が参加する観光協会に変えた。商工会は組織の若返りを図り、経営者を公募して、店舗の賃貸事業を始めた。観光協会の事業部門を分離、第3セクター方式の「(株)出石まちづくり公社」を設立した。一般町民も1株5万円で出資することで、町づくりに対する関心を高めた。平成11年、(株)出石まちづくり公社は「中心市街地活性化するTMO」として認定された。
    b.町並み保存活動「出石城下町を活かす会」設立
     歴史遺産に恵まれた出石の町並みを守り、明日の出石をつくる「出石城下町を活かす会」を昭和63年に設立。建築関係者を含め総勢186名が参加した。町民・行政・専門家が協力した町づくりを進めることを考え「町並ウォッチング」、「講演会」や地酒が観光シンボルとなるように「酒蔵コンサート」を開催、「地酒を飲む運動」、「町屋デザインマニュアルの作成」。「いずし町屋コンペ」などを主導した。

    出石町の紹介:
     但馬の小京都といわれ、昔の町並みと現代の建物が共存している町。旧町内に点在している守護寺、人々が生活している「町家造り」の家、船着場のなごりの「おりゅう灯籠」や見張櫓だった「辰鼓楼」などの昔の町並みと、静思堂、弘道小学校、町役場、伊藤美術館などの現代建築を数多く見ることができる。又、名物の「皿そば」は、昭和40年頃までは2軒のそば屋で、10月か
    ら半年間のみ営業されていた。年中食べられるように工夫したことにより、今では50軒にもなっている。

    内 容:
     16日15時30分 名古屋からおよそ300qの地にある出石に参加者7名全員無事到着。観光協会事務所をお借りして、上坂氏にお話いただいた。 平成17年4月、出石町は市町村合併で豊岡市に編入された(高速道路のサービスエリアで配布している地図から「出石」の地名が消えた)。まちづくりの母体として「まちづくり公社」を設立。長浜の黒壁(株)は少人数の大株主による簡単決定で成功していたが、出石では個人一株に制限して町民のまちづくりへの関心を高めた(株主330名)。今年は「そば伝来300年祭」の年、5月から6月にかけて「皿そば道中」として信州上田から出石までやく500qを若者たちが江戸時代の侍衣装に身を包み巡行。また出石城築城400年祭には20mx20mの一夜城を作るなど若者たちのまちづくりへの参加意欲は旺盛だ。 町全体に活気を感じた。
     懇親会は「葵」で講師の上坂氏を囲み、日本海の幸を肴に地酒の「楽々鶴(ササツル)」を味わいながら歓談した。宿泊は天皇夫妻が利用された「出石グランドホテル」。
    17日は9時から公社主任堀川さんの案内で町を散策。登城を知らせるための辰鼓楼、出石城跡、国体の聖火リレーに旗を振り、家老屋敷、地元建築家による新しい町屋、旧福富家住宅(旧町屋)、宮脇檀氏設計の弘道小学校(木造、山の傾斜を利用)、東大初代総裁加藤弘之生家、旧町屋街の材木町と堀川さんの楽しい語りとともに駆けめぐり、あっという間の2時間半。待ちかねた皿蕎麦で皆さん満腹になり、解散した。宮脇氏の作品は静思堂、旧出石町役場、出石中学があり、酒蔵コンサートや仏閣等まだ見ることできなかった史跡に後髪を引かれた。午後からは有志4人で丹後周遊。姿を消すことになった余部鉄橋(http://www.kawatoya.com/amarube/syasin.html)、日本三景天橋立、伊勢神宮のふるさと元伊勢を回り、全走行距離834q。実に内容盛りだくさんの緑陰となった。
    (文責 TS)

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    2006年10月例会

    日 時:10月25日 19:00〜21:00
    場 所:矢作葵ビル(株)3階会議室
    テーマ:「新月伐採と履歴の分かる住まいづくり」
    講 師:榊原 正三 氏(天竜新月材センター理事、榊原商店 代表)
        石川 太久治 氏(天竜新月材センター副理事、(株)石川木材 代表取締役)
    内 容:
     最初に両氏より、天竜T.S.DRY(以下ドライ)グループが、新月伐採を取り入れて、NPO新月の木国際協会と連携、天竜T.S.ドライシステム協同組合(天竜新月材センター)に進化していく過程の説明がありました。
     まず石川氏より、T.S.ドライグループの基本方針として、1、天竜地域以外の木は扱わない、2、枝葉から水分を飛ばす「葉枯らし」を3ヶ月以上行う、3、50年生未満の木は扱わない、4、製品は6ヶ月以上天然乾燥させる等、天竜材を徹底したこだわりで製品化・流通させることを目指したとの説明がありました。こだわりの例として木材業界の常識を覆して、人工乾燥ではなく、杉の葉枯らし天然乾燥で含水率20パーセントを達成、「静岡優良木材製品品質規格基準」をクリアした例が紹介されました。ちなみにT.S.ドライのTは(天竜)、Sは(杉:シダー)、DRYは(天然乾燥材)の意味を持つとのことでした。
     また榊原氏からは、23歳の時から木の伐採をやっていて、梅雨時に伐採した木は鉄砲虫が多く、値引きの対象となっていたが、2003年、京都でオーストリア人のエルヴィン・トーマ氏の講演の中で、「新月期に伐採し、葉枯らしした木材は割れにくく、腐りにくい」の話しを聞いたことがきっかけで、半信半疑で新月伐採(下弦から新月の一週間の間に伐採すること)を始めた。榊原氏自身新月伐採を始めて、腐り、虫食いの少なさに驚き、その後満月期には伐採できなくなって、現在に至っていると報告された。
     天竜新月材センターでは、新月伐採の木を「ノイモントホルツ」と新称して安定供給体制を整え、2年ほど前から出荷する一本一本の木にラベルを貼ってきちんと管理する生産履歴証明(トレーサビリティ)の取り組みも確立したとのことでした。
     質疑やその後の懇親会に渡っても新月論議に花が咲き、「新月期に刈り取った米は、粘りがあって美味い」など創造性あふれる雰囲気の10月例会でした。
    (文責 TH)

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    30周年記念講演会

    日 時:11月23日 13:00〜16:00
    場 所:中日パレス
    プログラム:
    当会の創立30周年を記念して、公開講演会を行いました。
    1.NIMRAの歩みとコンパクトシティの提案
      阿竹 克人 氏((株)阿竹研究所 代表取締役所長、NIMRA会長)
    2.アジアの街づくりの現状と課題
      林 清隆 氏((株)国際都市政策研究所 代表取締役所長、NIMRA会員)
    3.非電化工房の街づくり
      藤村 靖之 氏(発明家 非電化工房主宰)

    講演1:「NIMRAの歩みとコンパクトシティの提案」
    講 師:阿竹 克人 氏((株)阿竹研究所 代表取締役所長 NIMRA会長)
    内 容:
     はじめにNIMRAの歩みの紹介として、これまでの機関誌をもとに、設立構想以来の歩みと現在の活動の概要を紹介した。これにつづく講演は未来へのひとつの青写真であり、現実のアジアの都市問題にかかわる林氏の講演と、低環境負荷技術を途上国に展開している藤村氏の提案との三点をセットにして都市を考える材料にして頂きたいとして企画した。コンパクトシティの提案は講師がWeb上に展開している高密度森林都市構想をもとにしたものであり、以下の6点を提案するものである。
    (高密度森林都市構想:http://www.atake-sdl.com/woodcity/
    1.自動車交通を都市から締め出す。
    2.それに替わる水平垂直に自由に動けるエレベータ網でドアツードアを確保する。
    3.このシステムはコンピュータ制御され、救急、消防、ごみ収集、宅配や水とエネルギーの供給まで含めたすべてのサービスを行う。
    4.都市は緑化し自然の山を模した巨大な集合住宅とするが、各戸は戸建住宅化して外気と外光に接する。
    5.内部には住居以外の都市施設を集積する。
    6.都市を高密度化することで、平地を農地に解放し、人口爆発に対応する。
     最近、既存の都市をコンパクトに改造するよりも、海上に浮体構造で新設するほうが現実的かもしれないと思い、30周年機関誌に小説風の文章を書いた。
     今後のエネルギー政策として、二酸化炭素を排出しない水素エネルギーへの移行が望まれるが、海水から太陽エネルギーで水素を取り出す技術開発が人工光合成の名のもとに行われている。海水にはナトリウム、マグネシウムから金にいたるまで豊富な資源が溶け込んでおり、エネルギーさえあれば海水コンビナートが実現可能である。
     構想としては高密度都市となる島の周りに人工環礁と礁湖を設け人工水田ともいえるこれらの装置を設営する。一部の礁湖は人工干潟とし都市の有機廃棄物を海産物に変え食料を供給する。浮体とすることで免震構造であり、干満の差もない。周囲の環礁が防波堤にもなり十分に大きいので台風にも揺れない。また、関連技術として海上都市を結ぶ太陽熱飛行船も示した。これらの技術開発は温暖化で沈み行く環礁の島国への先進国の贖罪でもあると訴え、サンプルプランのCGが示して、構想推進へのNIMRAの協力を呼び掛けた。
    (文責:KA)

    阿竹克人氏の略歴
    1952年 伊勢市生まれ名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期修了
    丹下健三・都市建築研究所、(株)中建設計を経て、阿竹克人 建築システムスタジオを設立
    (株)阿竹研究所に名称変更し、現在に至る
    著書 「LOGO空間プログラミング」(共著 小谷善行 他2名)岩波書店
    「建築教室 生きのびる子供たちのために」(共著 丸山欣也 他)INAX出版
    「アンチ ハウス」(共著 森博嗣) 中央公論新社


    講演2:「アジアのまちづくりの現状と課題」
    講 師:林 清隆 氏((株)国際都市政策研究所 代表取締役所長、NIMRA会員)
    内 容:
     現在の世界総人口は約65億人であり、今世紀中頃には100億人に近くなると予測されている。日本や欧米の先進国では少子高齢化が進みつつあるが、世界の多くの国々、特に貧しい国々では急速な人口の増加を示している。アジアは世界人口の6割強を占め、超人口大国中国やインドを抱えている。日本をはじめ先進国の都市問題がそうであった様に人口の増加と急速な都市化が深刻な都市問題を引き起こしている。中国やインドの都市人口が30%前後であることを考えると、経済成長に合わせてここ数十年間の内に都市人口比率は倍増し、巨大な都市化の波が打ち寄せる。その他のアジア諸国にあっても首都一点への集中が加速し、都市問題の先鋭化と共に、農村との格差が拡大し、多くの社会・経済的軋轢を齎す傾向にある。このような背景のもとに、世界銀行、JICA等の都市計画などの、まちづくり分野の調査に従事した経験から、アジア諸国のまちづくりの問題と課題を実体験の事例からスライドを中心に紹介した。
     インドの事例としては混乱する都心部の業務機能やスラム等の住宅地としての受け皿として郊外地の効率的な開発手法として日本の区画整理導入の可能性を紹介した。また、バングラデシュはアジアでも最貧国のレベルにある国だがまちづくりの行政運営も混乱と悪弊に満ち、かつ資金難もあって健全な都市計画の立案や都市開発の事業推進が阻まれている。このような体制を改善するために、まちづくりのための行政情報の公開、財政制度、市民参加手法の確立など首都ダッカ市や第3の都市クルナ市を事例に計画行政の改善手法を紹介した。
     アセアン諸国の都市、バンコク、マニラ、ハノイ市など都市計画や都市開発の技術手法の移転、都市マスタープランの作成や交通計画調査の一環をも合わせて紹介した。中国の事例については、NIMRA旧会員でもある豊造園社長の小野豊氏に遼寧省瀋陽市および上海市の緑地計画の状況を報告して頂いた。瀋陽市では五里河公園整備事業を豊造園が受注し、実際に工事を担当した体験と上海市全体の河川、運河沿線を活用した緑地帯計画整備構想を提案した事例が紹介された。
    (文責:KH)

    林清隆氏の略歴
    元名古屋市職員。計画局、都市センターに勤務し、各種土地区画整理事業、都市高速道路、泥江再開発、藤前流通団地などに従事。NIMRA創設メンバー。
    1998年(株)国際都市政策研究所を設立。世界銀行やJICAのコンサルタントとして、マドラス、ダッカ、バンコク、ハノイ等、東南アジア諸国の都市開発計画の調査に従事。現在に至る。


    講演3:「非電化工房の街づくり」
    講 師:藤村 靖之 氏(発明家 非電化工房主宰)
    内 容:
     発明家の役割は困っている人を助ける事にある。この考えに立ち数年前から活動拠点を海外に移している。9月はナイジェリアで活動してきた。彼ら遊牧民は、冷蔵庫があれば肉・乳製品を長期間保存することができる。ヒアリングの結果、羊2頭分の価格であれば彼らは非電化冷蔵庫を購入できる。電気なしでの快適な生活が可能となる。
     モンゴルでもこのプロジェクトを進めている。ゲル(遊牧民のテント状の家)の脇に木の箱と鉄板とペットボトルで非電化冷蔵庫を作った。日中の屋外気温は30℃となるが、庫内は4℃に保つことができた。遊牧民の年収は20,000円以下、羊2頭は7,000円に相当する。非電化冷蔵庫の原価が羊1頭、売値が羊2頭ならばビジネスモデルが成立する。「非工業国における自立型持続型産業の育成」が可能となる。多くの事業化希望者から適任者を選任し具体化した。昨年は5台売れた。絶望していた人に希望と勇気を与えた。現地では照明の無い辛さにも耐えている。日没は早く午後3時で暗くなる。太陽電池や風力発電は移動する遊牧民には適さない。そこでバッテリー再生事業を進めている。発電機を馬で牽引させバッテリー充電する非電化事業である。2時間の牽引で、1時間分のTVや照明の電源が確保できる。現在モンゴルでは4万個のバッテリーが廃棄されている。これを再生すれば金額換算で800億円となる。この意味は大きい。
     ナイジェリアも同様である。年中30℃以上の気象条件のため獲った魚は直ちに干したり燻製にする。1日の燻製作業は16時間にもなり、彼らの目や肺を痛めている。こうした健康被害に苦しむ極貧困層を救うため「自立型持続型」産業が必要である。
     国内では、昨年パーマカルチュア(自然循環型農法)で生活する九州の女子修道院から依頼され非電化野菜貯蔵庫を作った。ススキと土を使って400人以上のボランティアの協力を得て完成させた。
     非電化製品普及活動を発展途上国で進める目的は、「困っている人を助ける」事と「発展途上国の人たちが将来先進国と同様に電気製品を使うならば地球がアウトになる。これを防ぐため」である。
     エネルギー単位として1GPを考案した。1GPは1原発。原発1基分の発電量である。我国のエネルギー供給は電力56GP、ガス37GP、石油31GP。こうして見ると色々なものが見えてくる。その他、オール電化住宅の普及に伴う懸念事項、太陽電池依存政策の危うさなど、広く我国のエネルギー政策に関する提言もあった。当日は1時間半にわたる講演であり、ここで全てをお伝えすることはできない。先生のHPや著作を参照して頂きたい。
    (文責:NS)

    藤村靖之氏の略歴
    1944年生まれ、大阪大学大学院 基礎工学研究科 物理系専攻博士課程満了、工学博士
    (株)コマツ 熱工学研究室長を経て、1984年(株)カンキョー設立・代表取締役
    1999年(株)発明工房設立、発明起業塾主宰、
    2003年 (株)非電化工房設立・代表取締役、NPO法人発明応援団設立・代表理事
    1998年より特許庁工業所有権審議会委員
    ホームページ http://www.hidenka.net/
    主な受賞:科学技術庁長官賞、発明功労者賞、
    93年アントレプレナー賞、94年ベンチャーオブザイアー、空気調和衛生工学会賞
    主な著書:「愉しい非電化」(洋泉社)、「さあ、発明家の出番です!」(風媒社)
    「企業家は未来に点を打つ」(H&I)、「これでアレルギーが克服できる」(かんき出版)

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    2006年12月例会

    日 時:12月6日 19:00〜21:00
    場 所:矢作葵ビル(株)会議室
    内 容:情報交換市
     忘年会を兼ねて、会員が持ち寄った情報を交換する情報交換市を行いました。

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